旅好きな大人への洒落たギフト本 – 行くはずのない離島アトラス

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死ぬまでに観たい映画100選、一度はいきたい名勝100ベスト、読むべき古典100冊とか、ある程度年を重ねた人間たちに、ほれほれ、まだやってないことが山ほどあるだだろう、と焦燥感をあおるタイトルの書が世の中にはあふれています。前回ミッドライフクライシスがらみで圧倒的な達成感を味わったマカロン作りを書きましたが、それと全く反対方向のベクトルで、大人のココロに沁みたのが、この本。

敢えて訳せば、
離島アトラスーー足を踏みいれたこともなく、訪れることもない50の島」というハードカバーです。地味ではあるけれど細部へのこだわりが感じられる装丁の本は独特の存在感を放つもの。それを手の上で紙の重みと一緒に感じるのは本好きの至福。
太平洋、大西洋、インド洋、北極海、南極海に浮かぶケシ粒みたいな孤島についてを綴ったもので、左右見開きでひとつの島という配列になっています。
筆者が訪れたことのない彼の地の描写や逸話と位置情報が左ページに配置され、右のページは地図のみ。写真という野暮なものは一切なく、簡潔な文章とタイポグラフィからイメージと静寂さが音をたてて流れてきます

ひとはそれぞれ絶海の孤島という心象風景をどこかに秘めていると思うのです。氷に閉ざされた北極海の最果てかもしれないし、南太平洋上のちっぽけな岩の塊かも、極彩色の鳥が住む熱帯雨林の緑かもしれません。そういう独自のイメージに共鳴させるべきなのでわたしの何処かに潜んでいる島の風景のことは書かないでおきます。
内陸育ちのドイツ人による書で、その英訳版を日本語で紹介するのは妙なかんじですが、筆者の意図としたところであろう短いセンテンスと平易な言葉が、イメージを膨らませる効果を発揮しています。

読んでみたい方のために、一部を訳してみました。

トレムリン
東インド会社所有の船舶ユーティル号が、マスカリン諸島へ向けてフランス南西部のバイヨンヌを発ったのは1760年11月17日。船長ジャン・デ・ラ・ファーグは、食料補給のため寄港したマダガスカルで、総督の指令に背いて60人の奴隷を乗船させます。イル・ド・フランス(現在のモーリシャス)で他の商品とともに売りとばす目論みでした。しかし、嵐にあい操船不能に陥ったユーティルはこのちっぽけな島の岩礁で座礁。わずか全長2キロ、幅800メートルほどで、ヤシの木が数本生えているだけの砂の洲です。その名も単純な砂の島。たどり着いた者はほとんど瀕死の重傷を負っており、生き残った者で、船の残骸からボートを造りはじめ、2ヶ月後に完成します。フランス人の船員全員122人がぎゅうぎゅう詰めで乗りこみ、救助を求めて発ちますが、彼らの姿を二度と見たものはありませんでした。取り残されたのは奴隷たちです。自由にはなりましたが囚われの身であることにはかわりません。しかしサバイバルへの希望が芽生えた奴隷たちは、火をおこし、井戸を掘り、鳥の羽で衣服をこしらえ、海鳥や亀や貝を獲りました。やけくそになってラフトを組み立てて僅かな希望を胸に命を賭して未知の海洋へ漕ぎ出す者もありました。ちっぽけな砂の洲で囚われの身でいるよりましだからです。残った者たちは焚き火をながめて暮らしました。15年経っても火は絶えていませんでした。60人の元奴隷のうち生き残ったのは7人の女と乳飲み子がひとり。コルベット艦ラドルフィン号がかれらを救助し、イル・ド・フランスへ運んだのは1776年11月29日のことです。砂の島に残されたのは焚き火の残骸である焼け焦げた薪、そしてフランス海軍士官でコーベット艦船長であったトレムリンの名だけでした。

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島というのは楽園にも地獄にもなりうると冒頭で筆者が記しています。
お子さまが読むと、此処へ行ってやろうなんて気になったりするかもしれません。足を踏み入れることがないであろう諦観に基づく心理的距離感がポイントだから、やっぱ、大人の本だと思うのです。

潮の香りのする岬に立っていたい気分です。スコットランドを代表するカレンスキンクという素朴なスープをジェイミー・オリバーが自分風に紹介したレシピ。スモークハドックじゃなければ塩漬けの鱈をよく塩抜きしたものか、淡白な味にはなりますが普通の白身魚でもOK.

スモークハドックのチャウダー

材料:バター/ベーコン(streaky)3枚/みじん切り玉ねぎ1個/薄切りリーキ1本/小麦粉 大さじ2/牛乳600ml/ジャガイモ 小さい角切り 400g/皮をとったスモークハドック 400g/コーン1本または1缶/グリーンピース少し/ブラックペパー/フィッシュストック(固形スープでOK)/みじん切りパセリ/カイエンペッパー

鍋にバターを入れて溶かし、ベーコンと玉ねぎを加え炒め、ある程度透き通ってきたらリーキも加え、リーキからうまみを含んだ水分をよくだす(2−3分)。とくにリーキは焦げつかないように注意。次に小麦粉を入れてソテー(1分程度)。

牛乳をすこーしつづ、強烈にかき混ぜながらダマにならないよう加えていきます。そしてスープストックとジャガイモを加えて沸騰させてから弱火にて5分程度加熱。ここで鍋底からよくかき混ぜないと焦げつきます。

コーンとグリーンピースを入れて2−3分。

ハドックを加えて5−10分。魚の身は細かくほぐさないほうが美味。パセリとカイエンペッパーをふりかけてサーブ。

**この手のスープは、魚をベイリーフを入れた牛乳であらかじめ煮ておくのが正当派ですが、鍋をひとつ余計に洗うのがめんどうなわたしにはこれで十分。仕上げに生クリーム(分量外)を入れた方が絶対美味。

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