グラストンベリー・トー*自分と場所のケミストリー

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人生をリセットする。
そういういい方は大げさだけれど、仕切り直しをしたいとか、リフレッシュしたい、または自分を見つめ直したい、原点に戻りたい、なんていう言葉を使いたい気持ちになるときがある。長期的展望にたってそういう時期であったり、目まぐるしくいろんなことがあった週だったり、そんな気分になる経緯はいろいろだ。

みんなそれそれ、そういうときに訪れたい場所をもっているんじゃないかと思う。わたしにもいくつかある。ロンドンのお手軽な部類ではプリムローズヒルからみるロンドンの街の輪郭、キューガーデンのお気に入りのベンチ。それからハンガーフォードフットブリッジ。これは残念ながら今はもうない。エンバンクメントとロイヤルフェスティバルホールの間のテムズにかかる歩道橋で、ミレニアムフットブリッジのいう小ぎれいで無味乾燥なクールブリテン的な(皮肉です)橋に架け替えられてしまった。鉄道橋にぺたりと貼りついた小便臭い小汚いせせこましい橋の真ん中に佇んで、ときおり通る電車の轟音を聞きながらみる夜色のテムズが好きだった。

127359866_d492f51fca_oもうひとつ、自分と場所の特別なケミストリーを感じるといえるのが、グラストンベリー・トー (Glastonbury Tor)。Torは丘を意味する古い言葉で、ロンドンから西へ2時間半ほど車を走らせたところにあるサマセットの田舎町にある小高い丘である。グラストンベリーにはふたつの顔がある。古代遺跡を結ぶ線であるレイラインの中でも最も有名なセントマイケルズライン上にあり、大天使ミカエルが降臨したといわれるセントマイケル聖堂が丘の上に立っている。アーサー王伝説のアヴァロン島で王が埋葬されているという説もあるパワースポットとしての顔。ニューエイジピープル(ヒッピーという言葉もありましたね)が集まり、田舎のマーケットタウンにしては珍しく占いの館やベジタリアンカフェがある。もうひとつは英国最大の野外ロックフェスであるグラストンベリーフェスティバルの開催地としての顔。どちらにしても一種の聖地である。

場所に秘められたパワーを無意識に感じているのか、ただ単にサマセットの田舎の風景が360度見渡せるのが好きなのか、両方なのかはわからないが、この丘の上の風に吹かれたい気になることがある。Veuve Clicquotとシャンペングラスをリュクサックにつめてこの丘に登り、ミレニアムの夜明けを迎えたときに撮ったのが上の写真である(2000年1月1日撮影)。とても霧深い朝で日の出をみることはできなかったが、靄の中から徐々に大地が浮かび上がっていく様子はミスティックという言葉を思い出させた。13年前はフィルムカメラの時代だった。コントラストが強く扱いが難しく、暗室で時間をかけてプリントしたものをスキャンした画像である。丘の稜線が麓の木々につながるあたりの白っぽい点々は夜通し焚かれていた松明の灯。右手前の白っぽいV字型の筋は羊が入らないための有刺鉄線。

こちらはデジタルの時代になって撮ったもの。丘の上からの風景。駈けているいる女の子は娘ではなくて、ただの通行人だが、彼女の走るさまがここに登る人々の気持ちを代弁している。

England, England

節目節目にこの丘に登ってきたようなのだが、なんだかまたしきりにグラストンベリーが呼んでいる気がする。また仕切り直しの時期なのだろうか。

自分と時間と場所が微妙な交わり方をすることに対する想いって自分はこの世にひとりしかいないんだな、っていうことの証拠のひとつのように思えるのである。

追伸 パワースポットに興味がある方は途中、巨石遺跡があるAveberyまたはストーンヘンジに寄ることもできるので、レンタカーでまわり、バースあたりに宿泊するといいのでは?日本とおなじ左側通行だし、田舎のAロードは時速100キロで一直線。
詳細はナショナルトラストのウェブサイトを。

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モノクロ写真好きによる「こだわってるこれについてひとこと言いたい」ブログ。犬が歩けば棒に当たる的に社会・本・映画・フードなど。使用写真は自前です。

6 コメント

  1. 霧に煙る写真、すごくイギリスらしい風景に感じちゃいます。
    そっかあ、13年前はまだフィルムだったんですね、モノクロだったら、コダックのフィルムかなあ。今はフィルム代を気にせずバンバン撮れちゃいますね~。

    グラストンベリーというと、やはりフェスが頭に浮かびます。足元ドロドロな景色が。
    ライブは色々観ていますが(日本での話ですけど)、野外フェスというものに参加したことがなかったので、「生きてるうちに参加してみたいものだなあ」などと思い、昨年初めてフジロックに参加してみたました。爺さんだから最終日だけ。

    コステロ目当てで行きました、トリはレディオヘッド、改めてレディオヘッドの人気の高さを実感致しました。自然の中で音楽が聴けるのは気持ちいいですね。
    いつかグラストンベリーのフェスに参加してみたいなあ、などと思うけれど、体力的にハードなんだろうなあ。長靴履いて行かなきゃですね。

    2枚目の写真、腕を空に突き上げた少女のポーズがなんともいいなあ、
    まるでフレディ・マーキュリーを彷彿とさせます。

    • 森のくまさん
      イギリスのミュージックシーンにもくわしいのですね!i野外フェスの足元ドロドロぶりもご存知だし。わたしはコステロのKing of AmericaとレディオヘッドのKid Aを死ぬほど聞きました。グラストンベリーは今年は誰なんでしょうね。おととしのビヨンセにはがっかりしましたけど。ローリングストーンズという噂もあります。今年はBBCがライブストリーミングをするというニュースが流れたばかりです。行けなくてもイギリス国内にいれば聴けますよ。いらっしゃいます?

  2. こんにちは-^^
    1枚目がフィルムの写真なのですね
    まるで映画のワンシーンですねーこれが自然の姿で
    目の当たりにしてしまったらぼーっと立ち続けてしまいそうです。
    行きたくなる場所ですかーうん、水辺、かなぁ
    海や湖の膨大な水の量とその大きさを見ると
    『自分の涙なんて、せこい塩水だなっ』って思ったり^^

    あっ私も、クマさんに負けずに(笑
    バーンズさんを1作読みましたー
    『10 1/2章で書かれた世界の歴史』なんですが…
    これは、私、初めてのジャンルですし、とにかく初めての本でした!
    歴史にはうといので、元ネタとか全然知りませんけど
    キクイムシというキーワードみたいなものが出てくると
    短編風で有っても、どの話もつながってるんだな~なんて思いながら読みました
    最後の10章の夢がなんだか好きでした
    冒頭が『目が覚める夢を見た』ってのが、グッときましたなー
    虫の宗教裁判も、真剣に読んでしまった
    whybeeさんはこれ原文で読まれたのですよね?
    何とも日本語訳が難しくてですね~正直、大変でしたー(笑
    そして、『終わりの感覚』今図書館予約待ちでございます!

    • フォレさん
      『自分の涙なんて、せこい塩水だなっ』
      これクールな台詞です。もし小説を書くようなことがあったら使わせてもらいます!確かに水辺は和みます。太古の昔、海からきた記憶がDNAに残っているのでしょうか。

      『10 1/2章で書かれた世界の歴史』は、バーンズ初体験だったら一番強烈というかきついかも。歴史物はやっぱりバックグラウンドが必要。特にあの本は。今チャールズ2世の時代の小説を読んでいるんですが、途中でWikipediaを熟読するはめに陥りました。終わりの感覚はもっと読みやすいから大丈夫ですよ:-)

      バーンスの本は原書でしか読んでいないので、どのような日本語に訳されているのか興味はあるんですが、機会がないままです。キクイムシなのですね、woodwarmは。

  3. こんにちは。
    初めておじゃまします。
    イギリスに住んでいらっしゃるんですね。
    まず飛び込んできたお写真が素敵だったので見入ってしまいました。
    13年前の写真ということですが、写真はいいですね。。いつまでも風化しないので。。
    私も写真サークルに入っていますが結構古い写真を掘り起こして持っていきますが、
    いつ撮ったかは問題にされません。
    2枚目のお写真は日本では多分撮れないスケールの大きさを感じます。
    少女が手を広げながら走っている風景がユーモラスですね。
    この真っ白の道が浮かび上がっているのも不思議な感覚です。

    • Tae1さん、
      のぞいてくださってありがとうございます。イギリスって日本の3分の2しかない小さな国なんですが、田舎の景色は雄大かも。日本は田舎というより山ばかりになっちゃうからでしょうね。
      写真サークルにはいっていらっしるのか、なるほど、という感じです。テーマがあったりするのでしょうか。マクロレンズはもっているんですが、宝の持ち腐れて使いこなしていないので参考にさせてもらいますね。
      スマホでつらつら見ることが多いのですが、スマホも会社のコンピューターも日本語が使えないので、いいね、だけで失礼することが多いと思いますが、九州のみどころを楽しみにしています。

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