「好き」のチカラ ー アンセル・アダムス

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何かをめちゃくちゃ好きであることは大切だ。
食っていかなきゃいけないし、生きていくためにはやらなきゃいけないことが山ほどあって、日々の過ぎ行くスピードに圧倒されてしまいもするけれど、「好き」は自分と世界の関わり方の一番重要なポイント。

20世紀を代表するフォトグラファーのひとりであるアンセル・アダムスの写真展にいってきた。ロンドンのグリニッジにあるNational Maritime Museumで開催されているPhotography from the Mountains to the Sea。ヨセミテやセコイア国立公園、ケープコッドやアメリカ西海岸で撮影された山と水の風景。1点を除きオリジナルプリントだ。

IMG_4309ある人々からみれば退屈なモノクロの風景写真が並んでいるだけで、入場料の価値は全くないんだろう。それはそれでしごく当然のこと。万人がみなおなじわけがない。美というのは愛と一緒で、言葉にすると気障ったらしいか、陳腐に響くのが残念なんだけれど、わたしにとっては「〇〇みたい」という比喩が成り立たない絶対的な美が、白と黒の無数の階調から自分の中に入りこんでくる。皮膚がぞわぞわする。印画紙の中から力強い手が伸びてきて、何処かへ連れていかれる。自分の中にあるんだけれど、普段そんな場所があることすら気づかず、ひとりでは到底行くことの出来ないすごく遠い処だ。

写真展に行くと写真集はオリジナルのもつ静謐で凄まじい引力が存在しない抜け殻であることを目の当たりにして打ちのめされもする。20ポンドはたいてこの作品展のカタログ写真集を買ったけれど、これは自分の目を通して体験したバイブレーションを頭の中で再生するための補助でしかない。居間の隅に積み重なっている写真集(でかすぎて重すぎて本棚に収容しきれない)たちの重みが減るは事実であるが、これはしかたがない。

いろんな巡り合わせを通して好きなものに出会えること。それは僥倖だ。

あなたの好きはなんですか。

Ansel Adams, Photography from the Mountains to the Sea
National Maritime Museum, Greenwich. London
2013年4月28日まで。

12 コメント

  1. 歳を重ねるごとに、なんだか「好きのチカラ」が弱まってるような気がする今日この頃です。歳のせいにしちゃいけないですよね。「好きのチカラ」を弱めてしまうから、老いていくような気も最近いたします。

    白と黒の写真、好きです。色彩を想像させる遊び心があるような気もするし。昔友達に貰った『NUDES』という百科事典のように大きな写真集が家にあります。主に白黒で撮影された作品が収められております。これがまた重いこと重いこと。

    わたしの好きは、音楽と本です。あと玉子焼き。

    • 森のくまさん

      大人になるにつれて嫌いなものも減るけれど、好きなものも減っていっていなぁと思います。音楽と本はブログから十分に伝わってきますが、玉子焼き?! お寿司屋さんは玉子焼きで店の善し悪しが判断できるという話を聞いたことがありますが、実は奥が深そうですね。

  2. こんばんは^^
    リンクサイト、拝見しました
    モノクロの写真は、色や光を想像させますよね
    光、が大事なのかなぁ

    >「〇〇みたい」という比喩が成り立たない絶対的な美
    そういう作品というか、モノに出会った時のうれしさはもの凄いですよね!
    私の場合もう殆ど、自己満足の世界だと思いますけど^^;
    そこに段々ハマっていく事に、ワクワクしてしまって
    いわゆる『テンションが上がる』状態です。

    私の好きは音楽と本と(クマさんとまるかぶり(笑))
    バイクですね^^

    • フォレさん

      世の中すべてが自己満足の世界だと思ってます。(これ開き直ってる?)だって自分を通してしか世界を見たり聞いたりかんじたりすることはできないんですから。フォレさんの読書量はすごそうですよねー。バイクはほんと、かっこいいです。わたしは今からはちょっと無理そうですが、風とスピード、そしてマシンとの一体感は肉体と感性に響くんでしょうね。うーん、かっこいい。

  3. アハハ。前の方の好きなものに「玉子焼き」が加わっていて思わず笑いました。

    そうですね。ムチャクチャに好きなもの。同じものがずーっとは続きませんが(気まぐれ)ありますね。無理とはわかっていても「無類の、納得のいくおしゃれがしたい」が、今の好きなものです。

    それで、1年間を目標に、ソーイングの個人教授を受けることにしました。今年の1月から。買ったままで手をつけていなかったパターン(型紙)-ヴォーグでなくてはならない‐がいくつかあります。型紙から衣装を完成させます。そして完成、マスターした型紙を基本にして、色、布地を代えて数枚同じ衣装を作り、本当に気に入った衣装だけを、数を制限して衣装棚に納めます。そうすると、自由自在の組み合わせのおしゃれが可能になりそう。

    1月に、簡単でも、ちょっとセンスの光る(型紙はヴォーグです)ドレスを作りました。完成寸前。2月のレッスンで完成できると思います。

    • 釉子さん

      「無類の、納得のいくおしゃれがしたい」というこだわりの姿勢、素敵です。自分の手で自分の好きなものを造り上げるというのは、究極のお洒落の選択ですよね。わたしも気に入ったたものは、色や柄違いで一度に購入します。作品をぜひ一度みせてください!!

  4. オリジナルプリントの凄さにはじめて圧倒されたのは、もうずいぶん前だけど、ある女性カメラマンがポルトガルの街角で撮ったタンゴというタイトルの写真展。どうしても欲しいのがあったけど90万円近く、値段もだけど踊っている男女が等身大くらい。もし、あげるといわれても、飾れる壁がない。洋書屋さんで彼女の写真集を見つけて買ったけど、オリジナルプリント素晴らしさとのさがあまりにもありすぎて手放してしまった。
    アンセル・アダムスは好きなカメラマンのひとり。ヨセミテだったかなぁ、まだ明るい時間に撮った月の写真がとても好きです。彼の写真展、うらやましいな。

    • asoboさん

      どうしてもほしい写真ってあります。でもそういう凄い写真が家にあったら自分が取り憑かれちゃうか、疲れちゃうかしちゃうんじゃないかな、とも思うんです。家はそれなりに所帯染みたコンフォートの場所という諦観というか悟りというか。

      ポルトガルってラテンの中でも一番あっさりしていて大洋に面していて日本人にココロが通じやすいかんじがするのはわたしだけなのなぁ。

  5. おじゃまします♪

    ワタシもモノクロ写真が大好き p。^/
    白と黒 光と影 の二色(一色と思ってるが^^;)
    で、表現されてる・する ところが♪ 

    カメラ・ネコ・カレー・テニス・珈琲・ポッポリー(鳩)・マグカップ・餃子・・
    秋桜・緑色・ごろごろすること♪ きりがない ^^;

    満足するもんすべて♪ ちゅうことで ^^;b

    • taketsuruさん

      満足するもんがたくさんあって豊かだーっ。
      いちど朝カレーのご相伴に預かりたいですっ!餃子も?
      緑はガーデニングに通じているのですね。あらあらコーヒー抜けてますよ。

  6. はじめまして♪
    昨日、偶然にもアンセル•アダムス氏の自叙伝の本を入手しました。
    まだパラパラとめくっただけで読んでいないけれど、
    リンク先の写真を見て、本を読み進んで行くのが益々楽しみです。

    私が好きな物はガクガクゴツゴツのドイツ全部と、草木、花など緑全般、
    好きなカメラが手放せません。あっ、夫も 🙂

    • Sachieさん

      コメントありがとうござます。
      そうですね、写真集だけではなくて自叙伝というものもあるのか、と気づきました。写真展では本人のインタビューのビデオも流れていましたが、美しい写真を撮るにとは目もチカラがちがうなと思いました。

      薔薇の季節のドイツはきれいですね。ガクガクゴツゴツのドイツが大好きっていう気持ちが、Sachieさんのブログから流れ出てくる感じです。

      また遊びにいらしてください。

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