安物なのに一生モノ台所道具ランキング(1位)

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一生ものの台所道具とはよべるほど元手は全然かかってないんだけれど、ずいぶんよき時間をいただいたよね、という台所道具たちランキング第1位は………

第1位 取っ手のとれたフライパン

誕生日とか記念日すら憶えられない人間に、いつどこで買ったか訊いても藪の中ですが、貧乏学生だった相方の所有物であったことは判明しています。数人の学生たちと家をシェアしていた頃です。このフライパンで作ったもので憶えているものがあるかという問いに対して、本棚の隅からビニール製バインダーが出てきました。日曜紙オブサーバーが特集したイギリス地方料理の冊子。毎週違う地方が紹介されていて、読者オファーで特製バインダーを注文すればこのように綴じることができるようになっていたもの。ジェーン・グリグソン編著。
そして指さした写真がこれ。鯖や鰯が獲れるコーンウォール地方料理の部に載っていたフィッシュパイ。魚好きなのは昔からなんだろうけど、親元を離れて料理に目覚めた若い学生が作るような代物じゃぁない。もちろんフライパンの取手はアルミ箔でくるんで保護してオーブンに入れたそうですが、案のじょう生焼けだったらしい。


シェアハウスの住人たちにラフに扱われるうちに取手がとれたんでしょう。学生の買い物にしては比較的しっかりした厚手で、それでも捨てずに数回の引っ越しを経てもなくなることなく彼にくっついてきたわけです。

この本がわたしの手元にこの年からあるのは奥付きに買ってくれた人のサインと日付があるから。メアリー・ベリー著。主婦料理研究家ナンバーワンの地位がデリア・スミスに移行していた頃です。Dorling Kindersley社らしいクリアで解りやすいプレゼンテーションの大型本。タルトタタンがアップサイドダウンアップルパイという誠ににアングロ化された名で紹介されていました。そういうところが正当派ブリティッシュをウリにしているメアリー・ベリーらしい。直火にかけられてオーブンにも入れれる焼き皿なんてあったかしらと台所の棚を引っ掻き回していると、この取手がとれたフライパンを発見。このレシピは大ぶりなりんご12個を半分に切り、ぎっちり詰めるので深さがいります。サイズもちょうどよかった。

タルトタタンは直火にかけてある程度バターと砂糖をある程度カラメル状にしてから,パイ生地をかぶせて焼くため、火の通り加減が一番重要。はじめにやり過ぎる焦げつくし、加熱が足りないとリッチな飴色のカラメルにならないし、パイ生地をもっと焼き込もうとするとりんごの方が焦げつく。同じ品種のりんごを使っても水分を含む量がそれぞれ違うしから同じ時間でやっても出来上がりがちがったりする。安物のフライパンだから熱伝導率がいいはずはないんですが、結局20年これで焼いているので、今さら他の焼き皿でこれをマスターしろといわれたら泣きます。タルトタタンの女王(あくまでも自称です)でいられるのはこれのおかげ。

レシピは今度焼いたときにご紹介したいと思いますが、りんごの季節ではないしなぁ。またりんごの品種の話とかになっちゃって長くなりそうなので、まぁ、そのうちに、ということで。
いやぁ、これでおしまいだとは思ってないんです。またこれじゃないとできないというレシピとの新たな出会いがあるかもしれない。そしてその可能性を求めて、また要らん道具を買っちゃったりするんでしょうねぇ。

ちなみに2位から5位までの記事はこちらです。

安物なのに一生モノ台所道具ランキング(2-5位)

7 コメント

  1. なかなかに精力的で、わきでるようなアイディアとご執筆ですね。楽しいです。取っ手が取れるほど使いこなされたフライパンがSavoryとSweetの料理を、両刀使いでバッサバッサとこなし、使い者はこの道具に愛着たっぷりのご様子。いいお話ですね。いわし?の頭がずらりのフィッシュ・パイは、最近VCRを引っ張りでして、再度見た映画「Babett’s Feast」のうずらの頭が飛び出して、保守的な村人をギョットさせた料理を思いだしました。

    手元にあるお菓子の本を開けてみましたら、紹介されていたのは、りんごに代わる洋梨のペア・タタンでした。タルトタタンの女王さまとはさすがですね。りんごの季節になったらりんごのタルト・タタンのレシピを楽しみにしています。次のエピソード待っています。第何位まで登場するのかしら。

    • 釉子さま

      いつも気の利いたコメントをありがとうございます。
      この世界に最低ひとりはきっちり読んで下さる人がいるのはうれしいです。

      言いたいことが溜まっているので、鬱憤ばらしというのでしょうか、夜にがーっと書いています。それにしても映画をたくさんご覧になっていますね。おすすめがあればぜひ教えて下さい。

  2. 早いお返事ありがとうございました。
    言いたいことがわきでて心に溜まっているって、それ、作家に必要な素養ですよね。いいな~。

    いえいえ、映画は見ているうちに入りません。サニー・サイダーさん、Babett’s Feastはまだでしたか。
    辺鄙な村の素朴な家の台所で、次々と作くり出されてくる極致の料理と、料理がいかに人の心をほぐす力をもっているかを楽しまれたいようでしたら、この映画はお奨めですよ。
    この話の原作は、「Out of Africa (邦名ーアフリカの日々?でしたっけ)」(見ていませんが)と同じ作家カレン・ブリックセンだとは、松岡正剛さんの千夜千冊で知りました。

  3. こんばんは^^
    ブログのテーマ、変わりましたね~
    手放せない、料理の道具ってかっこいいです!
    もしかしたら、フライパンに合いそうな料理を無意識に選んで
    作ったりしてたのかもしれませんね~
    私の手放せないもの…うーんなんでしょう…
    今の車は動かなくなるその瞬間まで手放せない気がします
    社会に出て、自分の貯金で初めて買った大きな買い物…
    長年愛用している道具やモノはなんと言うか
    親友、相棒、戦友、そんな所でしょうかね~^^

    フィッシュパイに驚きました!!
    もろ、フィッシュですね@@

    • フォレさん

      道具じゃなくて人間っていうところがいいですねー。もちろん友だちもお金で買えません。
      バイクだけじゃなくて車もあるんですか?!すごい行動力なんでしょうね。
      わたしもあのもろフィッシュオンリーのパイには驚きました。生臭そうで。
      ああ、お刺身が食べたいです。

  4. おじゃまします♪

    味なことする味なフライパンが1位なのね♪ ^。^v
    タルトタタンの女王にしてくれたんなら当然ですわ ^。^vv
    木べらもええ顔色してますね p。^
    食器って使い込むほど愛着が着くもん ^。^b

    • taketsuruさんちも使い込んだ道具がいっぱいそうですねぇ。コーヒーグッズでしょう。あのカリタのミルと紅いポットは手放せないし、マグやグラスもたくさん。カレーのルゥでしょう。
      お宅はすっごく温かくて居心地よさそうな感じがします。いいなぁ。
      カメラは何をお使いなのでしょう?そっちも道具としてがーんっと存在感がありそう。

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