イギリス人若手作家ベスト20

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20年同じ人と住んでいると話すことが減ります。話さなくても済む、または話さなくても事足りるという言い方できます。自由な時間が極端に少ないうえに、各々やりたいこともあるし。

その片割れが、新聞を手にしながら母親を探す幼児のような調子でわたしのところへやってきました。
「これ、誰だと思う?」と訊く声がはずんでいます。

イノセントな幼さを宿したふたりの若い男の写真。1983年と書いてあります。
「きゃーっ、イアン・マキュアンとマーティン・エイミス?!」
「あたり!」
「えーっ、何?この記事。みせてみせて」
「だーめ、今読んでる最中だから」
という具合に会話のトーンがはずむことがありました。

イギリス現代文学を愛好している人には非常に興味深い記事で、昨日(2013年4月6日)のガーディアン紙に掲載。過去30年間の若手作家ベスト20について。

コピーライトの関係上、画像は貼り付けていませんので、ガーディアンの元記事(リンクはこちら→Four decades of Granta’s Best of Young British Novelists)をご覧ください。作家たちのグループ写真がデカデカと掲載されています。今の大御所たちが若くて青い~。

文芸誌『Granta』が創刊され、イギリスの文壇に新風を吹き込んだのが1979年。ケンブリッジを流れるケム川の古称であるグランタと同じ名前なのは、前身がケンブリッジ大学の学生文芸誌であるため。そのグランタが10年に一度Best of Young British Novelistsと冠する号を刊行。新進気鋭のイギリス人作家、または若手のイギリス作家ベスト20という風に訳されているみたいです。10年に1度のイベントであるベスト20の発表を4月15日にひかえ、プロモーションがらみの記事でした。各年の選出の経緯が記されていて、1983年と1993年に選ばれた作家たちの同窓生的記念写真がでかでかと掲載されているのが目を引きます。

プロのエディターや作家が選ぶわけだから、たいていが「当たり」で、出世してメジャーになった作家揃い。1983年の部分は創刊時の編集長であったBill Burfordが書いていて、若手のイギリス作家ベスト20は彼のアイデアではなくてマーケティング専門家の薦めによるものだったという意外な話。マーティン・エイミス、ジュリアン・バーンズ、ウイリアム・ボイド、カズオ・イシグロ、イアン・マキュアン、サルマン・ラシュディ、グレアム・スウィフト、ローズ・トレメインを含む1983年版が現在の英国文壇の大御所ばかりの大当たりであったために1993年版(イアン・バンクス、ルイ・ド・ベルニエール、A.L.ケネディ、ウィル・セルフ、ハニフ・クレイシ、ベン・オクリ、ジャネット・ウィンターソンなど)の選出に苦労した逸話。2003年(セーラ・ウォータース、モニカ・アリ、ディヴィッド・ミッチェル、ディヴィッド・ピース、ゼイディー・スミスなど)では目を引く作品だったのに年齢制限のために選外となった作家の行く末や、選外にしてしまった大物など、選考過程が具体的に述べられています。発表前の2013年については現編集長John FreemanがAmazonとGoogleの台頭そして紙のメディアの衰退に言及しているのは当然でしょうね。このように10年ひとくくりにされると、「時代」という、もはや時代性を失いつつある言葉を意識せざるをえないです。冒頭に添付した写真にあるグランタ各号の表紙のデザインでも明らかです。

写真でだいたいわかるけれど(先にリンクした記事に写真と名前が掲載)、この30年に選ばれた若手作家たちは誰だったのかと1983年と1993年と2003年の号を本棚の奥からひっぱりだしてみました。リスト形式でみたい方のために各号の目次を末尾に添付しました。

1993年の写真で手前で寝転がっているポーズが妙に似合っているイアン・バンクスがガンで余命短いことを公表したのも今週だし、先週のガーディアンは妻を亡くしたジュリアン・バーンズの話(これも新刊の広告ではある)を載せていた。最近作家が年取ったなぁと思うのは、1983年組(村上春樹の世代)ばかりに目が向いているせいか。いまYoungといわれるお気に入りの作家をみつければ次の20年が楽しいじゃないの、と気持ちを切り替え、次号のグランタが届くのを楽しみにすることにします。

ちなみにグランタ誌による「Young novelists」すなわち若手作家の定義は40才未満。ここが日本と大きく違う。ある程度の経験を経て優れた人間観察を積み重ねてきたした人間が構築した完成度の高いフィクションが評価されてきたから。でもイーストアングリア大学のクリエイティブライティングのコース(カズオ・イシグロやイアン・マキュアンもそうなんだけど)などで、若いうちからプロ作家を目指す人たちが増えて若年化がめだちます。ゼイディー・スミスが「White Teeth」を書いたのはケンブリッジ在学中。とはいえ、十代の人の作品がベストセラーになる日本と文化的土壌が違うのはまちがいない。それにしても昨今思うのは『年をとる』ことは容易にできるけれど、『大人になる』のは難しいことです。

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4 コメント

  1. こんばんは^^
    リンク、拝見してきましたー
    日本人かなぁーと思ったら、カズオ・イシグロさんでしたね~
    名前だけ、何度か森クマさんに聞いて居たんですよ^^
    ベスト20に選ばれるなんて凄い!!

    私の初めてのイギリス文学はジュリアン・バーンズさんですので!
    あ、因みに好きな映画は結構イギリス作品が多いんですよ~
    (合作作品が多いのですが)
    キャリントン、から騒ぎ、いつか晴れた日に
    などをいつもお気に入りにあげております^^

    というか、旦那様の問いかけ方が可愛いんですが(笑

    • フォレさん

      あらあら光栄です。おすすめしたジュリアン・バーンズの「終わりの感覚」がイギリス人作家の作品初めてとは。なんかとっても渋いかもしれませんよ。

      いつか晴れた日にってしらんっ!と焦ってググったらSense and Sensibilityのことかぁっと驚きました。ためになりました!雰囲気はあってますよね。映画のタイトルはオリジナルからかなりかけ離れちゃうことが多いいですね。本の日本語訳のほうは「分別と多感」となっていて、映画はこれじゃみたくないですよね。空騒ぎってMuch Ado About Nothingのことかという推測は当たりでした。結構イギリス映画、がんばってるじゃん、と思います。

      ツレの方は全然可愛くないすごく気難しいおっさんで難儀しておりますっ!結婚するんだったら絶対イージーゴーイングな人にしてください。

  2. Granta! Natsukashii-desu. I had one year subscription many years ago but it faded away. You see, I am living in the U.S.A. (Seattle, WA.) and too busy reading American young writers work at that time.
    Sometime ago a Japanese girl friend of mine suggested that I should check into your blog site because it is very interesting. I agree. I enjoy reading your blog and looking at your excellent photos. Congratulations!
    (Please excuse my English! I don’t have “out going” email in Japanese
    installed.)
    Maybe someday.
    Hiroe

    • Hiroeさん

      お越しいただいてありがとうございます。
      日本語がメールで書けない環境にいらっしゃるということは在米歴がかなり長い方だと推察します。シアトルは住みやすそうで綺麗なシティという印象です。なぜか夜景のイメージが強いのですが、考えてみたらSitcomの Frasierを昔ずっと観ていたからみたいです。高層マンションがセットだったので。

      わたしには日本語で書くことが必要です。書くと頭の中がすっきりします。日記でもよかったんですが、他者をすこしばかり意識するとちょっとは推敲してベターなものが書けるし、どこの誰とはわかれないけれど、なにかをシェアすることができたらとても光栄です。

      またいらしてください。:-)

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