チップ文化の比較考察

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人が自分のことをどう思うかなんて気にしてどうするーー
みたいなことを達観した顔して子どもたちに言っているくせに、タクシーやレストランで渡すチップの金額に悩むのは、とどのつまり、全くのアカの他人であるウェイターやタクシー運転手にケチな野郎だとか社会性に欠ける人間だと思われることを気にしているんだと思います。

海外で暮らすまたは海外旅行をする際に、このチップの習慣に頭をかかえる人も少なくないはず。サービスに対する感謝の意を現すものなので、元来自発的に行うはずのものが義務化しています。都市や国や状況による微妙な違いを嗅ぎ分けることできず気まずい思いをするのは、チップ文化が浸透している欧米人も経験していることを述べた記事をみつけました。


To tip or not to tip… or should it be banned?

上位のリンクの記事(英語です)は、BBCのワシントン特派員が書いたもの。共通の言語を有するにもかかわらず似て非なるアメリカとイギリスの両国はチップの習慣も違うらしい。アメリカの方が金額のパーセンテージが高く(レストランでは15−20パーセントが相場)、バーやパブでドリンクを買う際にも1-2ドルのチップをバーテンダーに払うという習慣はイギリスにはありません。ざっと見回してみると、チップ大国ナンバーワンはアメリカのようです。

ニューヨークのレストランでのこと。2回目のデートで、勘定を済ませてから男性がトイレにたちました。その間チップを幾らもらったかを女性がウェイターに訊きます。8.5パーセントしか払わなかったと知った彼女は、男と口論をはじめ、2度と会わないと激怒しました。当のウェイターがブログに書いたこの逸話は、チップは金払いのよさだけでなく、広い意味での社会性が現れる指標として捉えられていることを物語っています。アメリカでのチップ経済は年間40億ドル(NASAの予算の2倍に相当する)という調査結果も引用されています。ウェイター/ウェイトレスの法定最低賃金が時給2.13ドルで、貰えるであろうチップを含むと時給7.25ドルと聞くと、そりゃあ払わべきだわと納得してしまいます。

この記事のソース(2012年調査)によるとレストランの平均チップのパーセントは:

ニューヨーク(19.1%)

トロント(17.1%)

ロンドン(11.8%)

イギリスのレストランでのチップは10から15パーセントが相場で、あらかじめ12ー15パーセント前後がサービス料として加算されている場合もあります。その場合はチップを払う必要はないので勘定書をよくみる必要があります

アメリカへ来た外国人も困るけれど、逆に外国へ出かけて行った欧米人もチップをめぐって恥ずかしい思いをしていることがあるという逸話を以下に拾ってみました。かっこ悪い思いをしているのは日本人だけじゃないんだ、と思うとちょっと勇気付けられますね。

Readers’ tipping nightmares and fairly tales

中国)中国で仕事をしています。貿易会議の際食事会が催され、ウェイトレスが素晴らしいサービスをしていたので、あるアメリカ人がチップをわたそうとすると固辞していました。なので無理矢理ウェイトレスのポケットにチップをねじ込んだんです。するとそれを目撃したマネージャーによりウェイトレスは即刻解雇されてしまいました。

(フィリピン)フィリピンのホテルでチップを渡すのは恥ずかしいことだと知りました。でも彼らの低賃金を考えるとチップを渡さない方が気が引けるんです。

フランス)南フランスのレストランで7人のフランス人と食事をしたときです。チップとして20ユーロをだしたところ、7人みんなが同時に手を出して制止しました。ひとり1ユーロ以下のチップでよいらしく、恥ずかしい思いをしました。

(香港)タクシーの料金がHK$50.30だったのでHK$100札をだしたところ
HK$50のおつりをもらいました。客の方が30セント分のチップをもらったのと一緒です。

(フランス)滞在していたホテルで食事をしているときステーキが固かったので文句を言ったら、よく切れるナイフを持ってこられました。ベッドも寝心地最悪だったのでチエックアウトのときに嫌みがましく5センチームだしたら投げ返されて罵倒をあびせられた。(これはユーロに切り替わる前だからずいぶん昔の話)

メキシコ)メキシコ滞在中のホテルの従業員にチップを渡すために両替をたのみました。USドルが好まれるためドルの細かいのが必要だったんです。そしたら両替をするためにチップを要求されたので、むかついた僕は紙幣を取り戻し、誰にもチップはあげないことにしました。

カナダ)ケベック在住です。レストランやバーの従業員は客から15パーセントのチップをもらっているという前提でその分収入に加算されて所得税が徴収されます。

(トルコ)トルコに住んでいました。タクシーではチップは払わないものでしたが、美容院ではカット、シャンプーなど各々担当した人にチップを払っていました。

イギリス)アメリカ人駐在員で6年ロンドンに住んでいます。初めてパブでドリンクを買ったときのことは忘れません。アメリカでもあげるチップの金額は多い方なのでバーマンに2ポンドのチップを渡しました。すると横にいた年配客にそんな習慣はないとたしなめられたんです。赤面して隅っこで縮こまって飲んだのをおぼえています。いまでもレストランでは20パーセントプラス数ポンドをチップで出してしまいます。

(アメリカ)アメリカ旅行中マンハッタンのステーキレストランで食事をしました。ワインは間違えるし、料理がでてくるのもおそかったので 10パーセントのチップを置いて店を出たらウェイターが追いかけてきたのです。もう10パーセント払わないと警察を呼ぶぞとすごい剣幕で怒るんです。言い争っても仕方ないのでその場で払いました。

中国とフィリピンの話には、政治、経済、文化すべての領域で自分たちの価値観を世界に押し付けてきた英米の姿をみる気ががするというと言い過ぎでしょうか。マンハッタンの話はちょっとこわい。普通チップの金額が少なかったら、ただよう空気の温度が下がるぐらいだろうけど。

以上のようにチップに戸惑っているのは日本人だけではありません。なので支払う時に卑屈になる必要もない。お客さまなのですから。レストランなら美味しかったとにっこりする。そんな心の余裕が大切ではないでしょうか。

その点、日本ではチップは一部の旅館を除いて一切必要ないし、日本名物として有名なワックスのレプリカが並んだショーウィンドーがあって、日本語のメニューが読めなくても指させばすむことだし、旅行しやすい国です。交通機関も発達しています。電車やバスが時間通りに走るという日本では当たり前のことは、実は多くの他の国の人々にとってスゴイことです。でも長年住んでみるとお餞別、お祝い、香典、お祝い返し、香典返し、お土産、お歳暮などともっと複雑で微妙な金銭がらみのやり取りがあることに驚くことになるのです。

感謝の気持ちが経済で数値として現れていることをみると、なんでもカネの世の中ではあります。計算がぱぱっとできることがスマートなtipperの条件であり、小銭をちゃらちゃらポケットにいれている男はささっとチップが出しやすいという利点があります。でも女性の場合はそうはいかない。お財布ってけっこうみられているのかも、と自分のくたびれた財布のことを考えます。

Wikipediaに主立った国のチップの比較表が載っています。参考までに。
http://ja.wikipedia.org/wiki/チップ_(サービス)

ちなみに添付した写真はバルセロナの下町Barcelonetaの安アパートメントに滞在したときに撮ったもの。一階がカフェ兼タパスバーになっていて見下ろすと、早朝から深夜までいろんな客が来ているのを観察するのは面白かったのですが、超うるさかった。

7 コメント

  1. こんばんは!イタリアはチップの習慣がありませんが、あると勘違いされています。南イタリアで良くあることですが、貴族的な振る舞いをしたいならおつりをもらわないことぐらいでしょう。あとは、1ユーロ以下のおつり銭はリストランテのテーブルにおいて帰るとか。ホテルの枕銭も必要ないです。ただ、トイレにお掃除おばさんがいた時は1ユーロぐらいあげるかもしれません。

    • イタリアってほんと、ありそうなイメージですよね。
      とにかく食材が新鮮で、料理が美味しくって、面倒なチップの計算もないとくれば、イタリアへいかねば、とつよく思うこのごろ。でもユーロになって物価上がってますよね、イタリアも。昔安かったトルコやギリシャすら高くなったと思うのはポンドが弱くなっているせいだけじゃないと思うんですけど….

  2. 最近物忘れが激しいもので、チップを払ったかすら忘れてしまいます。
    それにしても時々しか海外に行かないので、チップには未だに慣れないです。
    イギリスの細かいコインにも未だに慣れず、「えええとお、これ幾らだったっけ?」
    てなことが多々あります。元々暗算とかが苦手なもので、暗算というか数学かな。

    そう考えるとほんと日本は楽ですね、観光客に優しい国だ!
    チップよりディップのほうが美味しくてよいなあ、と思う今日この頃でございます。

    • ああ、そうそう外国のお金に慣れるのに時間がかかるのもチップをスマートにあげられない理由のひとつですよね。でも日本円って桁が多いから外国人にはちょっと困りものかも。通貨の桁が多い国には、桁がよくわからない観光客に一桁余計にぼったくるケースがありますよね。日本では考えられないけど。

  3. こんばんはぁ~
    チップってこんなに複雑だったんですねぇ
    習慣が無い日本人でもあたふたしちゃうのに
    地域によっても(慣れている方達でも)色々と
    トラブルがあるんですねぇ。
    チップ制度が無い代わりに…なるほど!!!
    御祝い事や香典、お返しですよね~
    逆に、海外ではそういうのは無いのでしょうか??
    確かに、いくら頂いた方にはお返しはいくらくらい~
    なんて、文化の中で暗黙の了解として広がってますね。
    うん、面白いですね^^

    そんな私は先日、おつりでもらった10円玉の中に1枚
    1セントコインが紛れていました@@;ビックリしたしたよ(汗

    • お祝い返しみたいなのはないみたいですね。でも、お誕生日などは祝われる側の方の出費の方がいただくプレセントより多い仕組みになっています。プレゼントは貰うけど、飲食費はこっちもちとか。子どものパーティーもちょっとしたお土産をつけるし。職場でも、お誕生日の人はケーキをもってきて人に振る舞う習慣があります。大のオトナがそんなことをするのは、何かと口実をつけてはお茶を飲みたがる(さぼれる)習慣によるものかもしれません。

      たまに外国のコインが交じっていることもありますよね。お菓子の袋からポーランドのコインがコロンと出てきたと同僚が騒いでいたことがありました。メイドインUSAだったんですけど、働いていたポーランド人のポケットから落ちたとしか考えれられないかなぁ。

  4. サンフランシスコ郊外のバークレーのホテルに2週間近く滞在したとき。
    ベッドメイクのチップを毎日ほんの少しずつふやしていったことがあります。
    といっても常識の範囲を超えない程度。最後の日ベッドサイドにユーモアのある手紙とお土産が置かれていて、胸がきゅ~んとしたことがあります。
    大きくはないけど、とても清潔で心地のいいホテルでした。
    チップが収入の基本になっている職業の人には、仕事に見合ったチップをキチンとあげないといけませんね。

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