1996年6月22日のそら豆

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書斎(study)とよんでいるせせこましいジャンクルームから過去の遺物がでてきた。この部屋が掃除不能で巨大なゴミ箱化しているのはモノがありすぎているからで、こうなったらここの整理は老後の楽しみにおいておこうと開き直るほど太っ腹でもない。数年おきにひっかきまわしては、前と何ら変わらない状態で放置される。この空間で毎日1-2時間は過ごして肺を患わない相方は、埃に対する耐性が発達したものと思われる。人体の適応力は偉大だ。

そこの本棚の一番したの隅っこにスクラップブックがねじこまれていた。無理に押し込んだのは自分なのだけれど、よくもまぁ、とつぶやきながら引っ張りだす。数年前に断捨離を敢行したときの生き残りで、旅行関係の記事を切り貼りしたものと、料理関係のもの。薄緑色だったページはところどころ焼けて藁半紙色に変わっていて、いろんなフォントとサイズの文字が標本のように収められてる。ペーパーレス社会となり、本を除けば銀行やクレジットカードなどの請求書とトイレットペーパー以外の紙とのご縁がなくなったわたしは、子どもの頃のアルバムをめくるときのような、強烈な隔世感に包まれた。紙の時代の蘇り。

スクラップブックはネットのブックマークが取って代わってしまった。でもデジタルな情報は作動環境がないとファイルを閲覧することができない。ハードもソフトも変わりつづける。時を越えて残るのはやっぱりモノ。モノが発するパワーには勝てない。

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とはいえ、旅行関係の記事は古すぎて用をたさない。古びたしょぼいパブは廃業してしまっているか、大規模投資をして改築されガラス張りのトレンディーなモダンブリティッシュレストランパブに成り代わっている可能性が大きい。個人経営のB&Bなんてやってない確率の方が高そうだ。昔タイのサムイ島で泊まった物置小屋みたいなビーチハウスがヴィラ風リゾートになっているのを発見したばかりだ。

食の変遷もあるものの、調理法とか合う調味料やハーブが変わるわけじゃなし、料理版の方は使える。ぱらぱらページをめくると、あった、見覚えのあるゴージャスな写真が。

この新聞記事に巡りあうまで、わたしはそら豆は薄皮ごと食べていた。というか皮ごと食べる派と剥いて食べる派に別れること自体知らなかった。緑の艶っぽい鮮やかさと青い風味に惚れ、皮を剥いて食べる派に転向したきっかけがこれ。フードポルノグラフィとよばれるヴィジュアルイメージがメディアを席巻しはじめた頃だろうか。

スモークベーコン(普通のベーコンでもOK)200g
そら豆(さやごと)2kg
ネギ2本
バター60g
白ワイン グラス1杯(なければ水)
ミントの葉、胡椒

そら豆をさやから出し、1−2分茹で、薄皮をむいておく
バターの半量をフライパンにいれ、細切りにしたベーコンをいためる。みじん切りにねぎを加え、できるだけの弱火にして、皮を剥いたそら豆とミント、白ワインを入れ、15分程度煮る。そら豆は柔らかくて、水分が煮詰まった感じになるはずです。必要であれば塩を加え、胡椒と残りのバターを加えます。

この食べ方のよろしいところは、やっぱワインを入れた方が美味しいんだよねぇなんていいながら、言い訳がましくワインの栓を開けてしまえること。そしてやっぱり白ワインに合うし、夏場のディナーの前菜にグッドなところ。

 

夏の味覚であるそら豆の季節も終わり。豆の皮を剥く作業を誰かと一緒になるのも楽しい。あーだらこーだらおしゃべりが続くのも夏の風物詩のひとつ。さて、夏物も片づけたし、そら豆も来年の夏までお目にかかることはないかな。

で、スクラップブックはどうしたって?もちろんねじこみましたよ、もとの処へ。

8 コメント

  1. エッ、そら豆のうす皮はぎ、又か~ですね。準備に時間がかかりそうで取り掛かる前にもう撤退です。

    いつぞや、「薄緑色のおはぎ」という写真に惹かれて挑戦したおはぎ作り。
    なんとサヤから出したあの小粒の枝豆の薄皮を一枚一枚(ゆでた後ですが)はがさなくてはならないことが判明し、「もう2度と作らないゾ」と毒舌をはたきながら、これ耐えながらはいだ経験があります。

    出来上がったおはぎもたいして堪能できる代物でもなく。それ以来、作ろうとも思いません。
    そのおはぎのレシピーは、スクラップ上がりどころか、即、くずかごへ没の運命に。
    サニー・サイダーさんの折角のそら豆レシピーのご紹介に水をぶっかけたようです。お許しのほどを。

    ご紹介のレシピーの魅力は私も、夏場の戸外での白ワインと軽い食事にありました。
    作るとしたら、私は「皮ごと」の仲間ですね。

    ところで、Broad Beansと呼ばれる、この空豆。
    オーストラリアでは、Peaと呼ばれるえんどう豆ほどには普及していません。お店に出回るのもちょっとの期間だけ。日本ではどうして食べるの?と聞かれ、あの空豆の上側に切り目のいったから揚げ、ビールのおつまみに合いそうなという一言を添えて教えてあげたけれど、「フーン」という反応。空豆は登場どころの少ない、マイノリティー族のようですね。

    • そら豆はlabour intensiveな食べ物ですからねぇー。でもだからこそちょっと特別感があるんです、わたしの中では。時間的にも精神的にも余裕があって、お天気がとってもよい夏の週末スペシャルです。外のテーブルでお茶を入れてお天道様の下での皮むきをします。皮の内側のお布団みたいな部分の感触が好きなんです。(変ですかねぇ)娘にはこの作業皮は楽しいことであると刷り込みが出来ていますから、声をかけると仕方ないわねぇという顔をしてますがすすんでやってくれます。四季の変化の幅が異様に大きい国にいると、こういう季節の感じ方好きなんですよー。だからいつもよりちょっと豪華目な白ワインを開けて、前菜を他にもいくつか用意して、飲み屋のつまみ風にして、パティオでだらだらと夜が更けていきます。

      でも、そんな夏も完璧に終わりです。フリースにブーツです。今日は。

      めんどくさい食べ物であるそら豆はAusieの気性にあわないのかなぁ。
      こちらにはpulseを使ったお料理はいろいろありますよ。うぐいす餡は何で作るのかと調べてみたらアオエンドウと書いてありました。なんだかお饅頭が食べたくなりましたー!(笑)

  2. 興味深いお答えありがとうございました。
    昨日、価格がちょっと高めの珍しいものを売るThomas Dux という食材屋でそら豆をかごに入れて、サヤごと売っていましたので、買ってきてレシピー、試してみますね。薄皮をはぐか、はがさないかはその時の気分で決めることにします。Sunnysiderさんの、薄皮をはいだときの内側のお布団みたいな感触っていうのも、こよなく興味がありますし。

    Pulseのレシピーが多い!英国人の食にたいする旺盛な好奇心は見上げたものです。うぐいす餡まで出てくるのですね。aoendoですか。でも、日本語が分かる厳しい人から、緑なのに何故、青なのだ!と文句が出るかも。

    Pulseのレシピーで思い出しました。日本では一般用語として豆類全般を雑豆というらしい。前、「オーストラリアの雑豆産業」というレポートを書いたとき、オーストラリアでの雑豆のレシピーも入れることが条件だったのです。その一つにHarry’s Meat Pieを入れました。ご存知でしたっけ。港に面したウールームールーの屋台で売られている、マッシュのポテトとえんどう豆の中身のパイ。そこには英国人旅行者がガイドブック片手で買いにきていますよ。有名なのですね。

    この屋台のことでお話したかったことがあります。marikohylandをgoogle してくださいませ。面白い発見があるはずです。

    • 風邪でダウンしていました😞
      すっかり気温が下がり(最低気温7−8度)風邪のシーズン突入です。
      お布団みたいなのは外側の鞘の内側です!薄皮の中はつるりんですよーー。
      Harry’s Pieはどうもイギリスにあるその辺のパイ屋さんをアメリカンダイナー風にした感じに見えます。オーストリアって感覚的にそういう位置づけにある気がします。おいしそう!マッシーピー好きです。
      Common wealth食文化なんでしょうね、パイは。イギリス人のパイ好きはシドニーにも進出しているのですね。
      うちの街にもパイ屋さんがあります。Steak and oyster, York ham and stilton, wildboar and leek, five nations(ラグビーにちなんで)などフィリングも様々です。

      真理子さんは相変わらずパワフルですねーーーーー!!ブログ拝読しました。
      ときどきのぞかせていただいて元気を分けていただくことにします!

  3. イギリス人のパイの中身のバライティーの広さにはびっくりしました。猪肉まであるのですね。

    さて、真理子さんのブログとサイトをご覧になったようですが、私も開いてみましたが、そこにはHarry’s Pieが出てきませんでしたので、このサイトを私に紹介してくださったメグミさんに尋ねました。答えがすぐに返ってきましたので、再度お知らせしますね。日本のGoogle、YouTubeにハイランド真理子を入れてみていただけますが。コーディネート1~4までが出てきますが、1の最後から2のはじめにかけて、彼女が紹介するHarry’s Pieが出てきます。楽しんでください。

    • 土曜日の昼間にはやらなきゃいけないことが山積しているのに、うぉーっ、みてみて!と娘を巻き込みながら4本とも観てしまいました。ベビー用カーシードに納まっていたジーンちゃんは、美女になっているのに対して真理子さんのあのカラッとしたパワーとかわいらしさが全然かわっていないのに、時間の捻れを感じました。いやーっ、Harry’s pieを食べにいこうかな。

  4. ネッ、面白かったでしょう?
    Marinaちゃんも巻き込んで楽しんでいただいたようで、笑いました。

    彼女が紹介する食べ処は、私が知らないところが多数ありました。私もそのうち(なんて言っていると行かないのですよね)にいくつかに出かけようかな~(ますます、行きそうにない)と、思っています。

    ヒロ君も恵さんもこのサイトをみたようですが、「相変わらず….」「ヤッテル、ヤッテル」の一言でお終いだったとか。真理子さんのシドニー社会でのアクティビティーは、mysteryです。誰も余り知らない。何かやっているらしいけれど、とサイトなど覗いて、ときどき話題に上がってらっしゃるようです。

    いつぞや、恵さんがメルボルンからやってきて、元オーザンの数人に声をかけて集まることになり、たまたま
    真理子さんの携帯番号を持っていた私がお誘いの連絡を取りました。「行きます」と返事をいただいた
    のですが、皆で待っていたレストランに、ドタキャンが入りました。連絡はそれっきりです。

    • お返事おくれましたー。スマホも会社のコンピューターも日本語が打てないので、家に帰ってから、と思っているとつい他のことにまぎれている。そういう日常です。
      相変わらず、というか天真爛漫なパワーはすごいですよ。ヒロ君と恵さんはいかがされているでしょうか。

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