季節感のはざまで

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暖炉用の薪が玄関先の籠に積んである。その光景になんとなく親しみを感じてきたなと思ったら、近くにある林檎農家の販売所、というか納屋が、ひと月ほど前から営業しているのを思い出した。プラムと洋梨のシーズンに始まり、クリスマス明けに林檎を完売して商売が終わる。そこでりんごと洋梨をどっさり購入。林檎はとっても林檎らしい芳しい香りのKaty(この果樹園はこちらの記事『ロンドンにないもの』でご紹介しています)という品種。梨は正統派、梨の王様William.梨ってすぐ熟れ過ぎでしまうのよね、とつぶやき、半分いやな顔をしながらもうきうきと洋梨パウンドケーキを2個焼く。

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朝の光が、こんな日はカントリーウォークに出かけてパブでランチがよろしいんじゃないかしらと告げている。はいはい、そうしましょう。樹木は紅を纏ってはいないけれど、明度がすとんと落ちた緑がなんだか懐かしい。妙に高くなった空に赤鷺がまあるく円を描く。どんぐりととちの実を拾いジーンズのボケットに入れたら、ぼこぼこした感触が歩くたびに腰に当たる。ぼこぼこ、じゃらじゃらしながら10キロハイペース歩行。家に戻るとすぐさまお茶を淹れ洋梨ケーキにナイフを入れる。新鮮な空気を吸った後はどうも眠いね、と黙ってしずしずと飲んでいたら、ドアを叩く音がする。そこにいたのは林檎の箱を手にしてご近所さん。おすそ分け、いただきました。林檎の山ざんす。さてさて、またあの林檎ケーキを焼いてみますかな。いや新しいレシピをさがさなくっちゃ、と考えはするけれど、やっぱり頭の芯はねむい。暖炉の煙突掃除屋さんを呼ぶべきかしら、そろそろ。

これって、秋なんだわ。

季節を感じるのは、なんだか切ない。感傷っていうやつだろう。感傷とは感情のバランスがちょっとくずれて、何かが過多になってしまうことか。去年や一昨年やその前の年の記憶を喚起するからからで、過去がふっと鼻先をよぎるのは、郷愁と同じで甘くて痛い。生々しい季節感が時間の軸に埋め込まれている国に産まれて生きているのは、ある意味では僥倖だと思うけれど、常夏の国に住んでいたら、時間の流れに対する耐性がもうちょっとあると思うのは気休めか。

洋梨&レーズン&カルダモンのパウンドケーキ
洋梨とくればスパイスの王道はクローブ、シナモンまたはジンジャーですがカルダモンも合います。フルーツがたっぷりはいっているのでしっとり系。わたしが選ぶレシピはほとんどフルーツ大量消費型です。レシピはカルダモンパウダーを使用ですが、わたしは料理用に鞘ごとのを買うので、中の種だけを出して適当な分量でやっています。

材料 (パウンドケーキ型一個分)
洋梨 500g
セルフレイジングフラワー(または普通の小麦粉+ベーキングバウダー小さじ1半程度)250g
ブラウンシュガー(または三温糖) 125g
卵2個
室温にもどしたバター 125g
サルタナレーズン(普通のレーズンならあらかじめふやかしておいたほうがよいかも)125g
カルダモン 小さじ1
牛乳 大さじ4
蜂蜜 大さじ1


1)洋梨は縦切りにして薄くスライスする。2/3の量をさらにざく切りに。
2)バターと砂糖を泡立て器でふんわりするまで撹拌し、卵をひとつづつ入れまぜ合わせる。さらに牛乳も加えて混ぜる。
3)粉類とスパイスを加えてさっくりまぜる。(この時点でちょっと固い感じですが、ジューシーな梨が入るので大丈夫)
4)ざく切りの梨とレーズンを加えて、ケーキ型に入れる
5)残った梨を表面に並べて埋め込む
6)160℃のオーブンで1時間から1時間15分程度焼く
7)蜂蜜を上部に。

14 コメント

  1. 情景が目に浮かぶようです。

    それって秋なのねぇ~。
    あ~~洋ナシ500gって高うござんす。
    そして更にブラウンシュガー125gって。。。嗚呼~ダイエットはいずこへ。。。

    • 洋梨って日本ではまだ高級フルーツなんですねぇ。残り物消費よりやっぱ、そのまま大事に食していただいた方がいかな。ケーキとかクッキーって、自分で作ると高カロリーなのが納得できるんですが、家で作ったものは美味しい!ダイエットより食欲の秋でーす。

  2. 秋の描写が素敵です。風景や香りが浮かんできました♪ 五感が震える秋ですね。
    なんとも美味しそうなケーキ! これは是非試してみまーす!Williamsに似たような緑色の梨は手に入るので。パウンドケーキというと、卵が5つくらい入りそうですが、これはそれほどでもないのが嬉しいです。あ、カルダモンは種ではなく、粉で大丈夫ですか?

    • 洋梨って、買ったときは堅いから食べごろまで置いておくと、あれれ、いつのまに、こりゃちょっと熟れ過ぎか?ということになりますよね。(アボカドと一緒)それで、あわてて消費するのに、こういう普段っぽい地味系のレシピがスタンバッていると助かるんです。卵も大量にいらないし。もともとのレシピはカルダモンの粉の方です。でもあまり強烈でもなんなので、小さじ1よりちょっと少ないくらいで1回目を焼いてみるといかがでしょう。洋梨はどんな品種でもよいですよ。500gというと、でっかいのが3個程度です。リンゴとデーツとシナモンの組み合わせもグッドです。

  3. あああ、暖炉を想像するだけで、うっとりしちゃいます。
    暖炉に薪をくべながら珈琲でも飲んで、夜を過ごしてみたい年頃です。
    もしくはエズラ・パウンドの詩を読みながら、洋梨のパウンドケーキを食べてみたい。

    それにしても美味しさが見事に伝わってくる写真だなあ、いつも素敵ざます!
    パウンドケーキが結構好きなんです、それもしっとり系のパウンドケーキが好みです。
    シナモンと相性がいいというと、まず林檎が思い浮かぶけれど、洋梨とも合うのね。

    そしていい季節ですね、湖水地方をハイキングしたい!クライブみたいに。

    • 鍋奉行じゃなくって、暖炉の火奉行、好きです。薪をたして引っ掻き回すのは充実感があります。古い家はそれなりの味わいがあってよろしいんですが、最近はやりのすっきりしたエコハウスにあこがれます。ま、みんな無いものねだりなんでしょうかね。
      紅茶に合うと言えば、どっしりしっとり系のケーキで、焼きっぱなしの地味なお菓子ばっかりです。うちは。どうもお洒落とはほどとおい。

      湖水地方に行かれたんですよね、前回は。次回はゆっくり時間をとってカントリウォークいかがでしょう。湖水地方までいかなくても、緑豊かないいところはサウスにもありありますよー。

      食欲の秋に、行楽の秋に加えて、音楽と映画の秋。通勤の車の中はArctic Monkeys とKings of Leonのニューアルバムを大音響で聞いているこの頃でございます。

  4. ドングリの写真で始まる英国の秋の風物誌すてきですね。どうもありがとうございました。
    洋梨のパウンドケーキおいしそう!小麦粉タップリでなく、果物タップリが気にいりました。早速、作ります。洋梨は4,5種でまわっています。どれにしようかな~。

    来週、田舎の友人宅に3泊おじゃまで出かけます。おやつ用にケーキを焼いていくつもりですが、今ではすっかり定番となったジュリーのアップルケーキか、この洋梨パウンドにするか迷いますね~。選択の幅をグーンと広げていただいて、サニーサイダーさん、本当に助かります。

    ところで、前のそら豆料理もつくりました。ゆでたら、薄皮はむいたほうが断然いい、それに、薄皮むきは思ったよりずっと簡単でした。そら豆もそうでしたが、白ワインの味がしみてそちらを満喫いたしました。

    それに京極さんの「のちのこうせつ百物語」も古本屋で簡単に入手できました。現代版浦島太郎のお話内容もですが、凝った書きぶり、楽しんでいます。でも厚いのですね。びっくり。

    さて、先ほど見ましたら、そら豆欄に、後で寄せたコメントを読んでいただいてない形跡。もう一度、取り上げてよろしいですか。このコメント欄にグレーの幕がかかるのです。ちょっと読みにくいのですが。改善は可能なのでしょうか。

    • 残り物の果物消費用の焼きっぱなしケーキばかりですが、気に入ってくださって光栄です。そら豆も皮むき派に転向ですね。そちらはこれからこういう夏らしい食べ物がおいしい季節ですが、イギリスは昨日から急に冷えこんでキャセロールとかパイのシーズン突入です。
      京極さんの本は、そうなんです分厚くて重いんです。でも次々と頁をめくってしまい意外と短時間に読めてしまいます。ノーベル賞の発表に刺激されてAlice Munroを Kindleでダウンロードしとところです。やっぱり睡眠時間を削って時間を作るしかなさそうです。

      ブログのデザインはそのうちまた変えるかもしれませんが、とりあえずは観にくくて申し訳ありません。

  5. こんばんは^^
    陽射しが優しく感じる様になったり
    肌をなでていく風が少し冷たいなって感じたり
    ちょっとずつですけど季節は移ろいゆくのですね~
    季節の移り変わりには敏感で居たいと思いつつも
    日常の中で忙しく動いてると気付かずに過ぎてしまいそうです
    そして、日本……気温が30度とか越えちゃってちょっとマズイです
    予報だと11月から一気に寒くなるらしいので
    秋を感じられる時間はほんのちょっとみたいです><。
    洋梨ですかー焼き上がりいかがですか^^
    パウンドケーキに洋梨のエキスがしみこんでそう!
    これは一切れ一気に口に入れて味わいたいです
    …食いしん坊なんです(笑

    • はははー、食いしん坊なのはわかっていますよー。でも食べ物がおいしいのは人生の幸せのひとつ。バイカーさんはやっぱり、乗らない人間より風に敏感で、季節や天候の移り変わりを風を通して本当に肌で感じれるんですよね。いいなぁ。
      においとか味つきのブログだれか発明してくれるといいんですけどねぇ。

  6. とてもおいしそう。
    洋梨は大好きで毎年この季節にはジャムをつくります。
    つくった半分は日頃お世話になりっぱなしの親戚にとどけます。
    お返しに日本の梨をごちそうになります。日本のは瑞々しくて繊細な味わい。ジャムにするよりそのまま食べる方がぼくは好き。それに高価だから、ジャムにするにはもったいない。洋梨のと同じくらい、イチジクのジャムもつくります。
    もう少しするとリンゴのジャムを紅玉で。焼きリンゴもつくろうと思っています。
    この記事を見て、しばらく歩いていないドングリが落ちてるコースのことを思い出しました。
    セロファンに包んで、しばらく会っていない友達に送ったりします。

    • さすがasoboさんですねー。秋といえば果実で、果実といえばジャムづくり。洋梨のジャムはほんのり上品な味そうですね。いちじくもおいしそうっ!赤が濃い小粒の紅玉、懐かしいです。どんぐりのプレゼントも洒落ていますね。都会に住んでいたら、そういう失われてしまっている季節感のギフトはポエムだ…….

  7. こんにちは。お初でございます、あまりにも好みのブログに出会ったもので興奮しております。写真も文章も素晴らしく、引き込まれました。この気持を(笑)どこにコメントしたらよいか考えましたが、最新記事にさせていただきました。ひとつひとつ遡って拝読させていただきます。ひとつ楽しみが増えました♪

    • 莫大な量の情報が漂うインターネットの海で、一滴の水に相当するこのブログにお越しいただいて、なにかしら共感するものをみつけてくださったのは、ご縁だし、とても光栄です。有り余るお言葉ありがとうございます。また、たくさんのlikeをいただいて嬉しいです。ブログって暗い井戸の底に向かって独り言をつぶやいているようなものだと思うこともしばしですが、このようにポジティブなフィードバックをいただくと、よっしゃあ(笑)という気になります。はじめまして、そしてどうそよろしく😊

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