シティの条件 カフェVSコーヒーショップ

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街がシティに昇格する条件として、この国では伝統的に大聖堂(cathedral) があることが挙げられていた。ステータスがかわったからといって財政面その他メリットはなく、単なる気持ちの問題みたいだ。ま、スピリットって大事ではあるけど。わたしの物差しでは、グッドなコーヒーショップとカフェの両方があるのがシティだな。

昔、男には敷居を跨げは敵が七人しかいなかったらしい。数はメタファーとしても男女を問わず敵は増えている。人間のみならず街には物欲、煩悩、嫉妬その他諸々が待ち受け、ティーンエージャーに至っては、外界はおしなべて生きにくい場所らしい。コーヒーショップとカフェは教会や神社仏閣みたいな役目を担っている。都市という戦場で、英気を養う緩衝地帯。安らぎがあったり、見失った自分をとりもどすことができ、小さな刺激にもなる。誰かと繋がることもできる場所。

カフェとコーヒーショップってカトリックとバプテストのようなものか。仏教でいえば禅宗と浄土宗みたいな。日本の飲食業関係の法規では明確な線引きがあるのだろうが、わたしの中ではちょっとちがう。

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コーヒーショップ
原点は言わずもがなコーヒー。美味いコーヒーを人々に飲ませ、コーヒー文化を啓蒙しながら営利を追求する商売。コーヒーがお殿様で、食べ物はそのしもべというスタンスが明確。自家焙煎をしている。豆の仕入れにこだわっている。注文のたびに豆を挽く。

シャンペン&キャビアに匹敵する組み合わせといえば、コーヒー&シガレットだろう。公共の場では禁煙であることを考えると、コーヒーのベストフレンドはチョコレートか。でも、オペラなど主役級のケーキでは主客転倒になる。だから美味いブラウニーがあること。これは必須。マフィンなど焼きっぱなし系の焼き菓子が充実している。何の変哲もないレモンドリズルとかキャロットケーキではなくて、どこかに工夫がある美味なケーキ、パイの類い。バターたっぷりでワサワサしていて食べ終わると散らかるクオリティで、大きめのクロワッサン。フィリングが充実しているベーグルもウェルカム。パニーニもうれしい。

そして大事なのが、チェーン店でないこと。オーナーのセンスが感じられる店がいい。コーヒーの歴史を彷彿とさせるトラディションとトレンドの適度なバランス。コーヒーってジャズやクラシックみたいに奥が深いから、常連客を惹きつけるけれど、排他的でなくオールウェルカムで、来た人みながコーヒーカルチャーに溶けこむことに安らぎをおぼえる。

そこそこ長居できるけど、そんなに長ーくは居れない空気。客の回転率を維持しなければ経営が成り立たいし、暇つぶしのためではなく、ポジティブにコーヒーを楽しみくるところだから。フリーwifiなんかなくてOK。一緒に居る人とのコミュニケーションを肴にするか、独りを楽しめ。とはいえ、週末版のぶ厚い新聞を分け合って黙って読んでいるカップルのいる光景が似合う場所でもある。

 

カフェ
美味いコーヒーを出すけれど、根っこは都市のオアシスであること。コーヒーはその一部で、食べ物と他のドリンクの比重が大きい。といえばあまりにも守備範囲が広いので、テーマを求めてしまう。ブレックファストとかパンケーキがウリだとか、オーガニックの食材を使っているとか、ベジタリアンのメニューが豊富とか。美術館やシネマ併設カフェも好きだけれど、そういうには別格だ。やっぱり個人経営の小さめの店がいい。できればウィンドウが大きくて明るくて、独りでぼんやりもできるけれど、誰かと長話もできる。テーブルの間隔と、アコースティックの環境も重要。声が通りにくい空間って意外におおい。それから上からハードな照明がキンキンの空間もだめだ。などと住環境に注文が多くなるのもカフェだなぁ。でもこちらもキャラクターがあり適度にトレンディで、太陽の光や季節を感じさせるテラスの席があればもっといい。

コーヒーショップもそうだけれど、適度に客をうちゃっておいてくれて、でもほったらかしでない接客態度。店に漂うフレンドリーな雰囲気。その空間を支配するのが資本ではなく、オーナーという人間であることがにじみ出る。これらも重要。こういう人が親戚や友だちにいたらしいな、と感じさせるスタッフだとなおさら引き寄せられる。

わたしが住んでいるのはシティにはなれないタウンだ。スターバックスやコスタコーヒーはいくつもあるし、ジェイミーズイタリアンだってYo SushiだってAppleストアだってある。お眼鏡にかなうコーヒーショップはあるけれど、カフェがない。両者を生み出す土壌、つまり街のダイナミズムに欠けるってことだろう。ロンドン通勤圏内っていうのが、独自のシティ文化を生み出せない理由か。

家からも職場からも離れていて、ダークで苦くてホットなドリンクとともに、憩えると感じられる。そんな場所は多すぎることはないよなあ。ま、この噺は、せいぜい拡大して英語圏には当てはまるとしても、欧州大陸や日本では事情が違いそうだ。日本には喫茶店という懐かしい響きのカテゴリーがまだあるみたいだし。

憩いを求めてカフェ論もどきをつぶやいているってことは、生活に潤いが欠けてるってことなのよね、とワインのボトルを開ける口実にする金曜の夜。

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モノクロ写真好きによる「こだわってるこれについてひとこと言いたい」ブログ。犬が歩けば棒に当たる的に社会・本・映画・フードなど。使用写真は自前です。

15 コメント

  1. コーヒーショップとカフェの定義、なるほど〜です。
    おもしろく読ませていただきました!
    私はカフェよりコーヒーショップ(日本ではなじみの薄い呼び方ですが)、コーヒーショップより喫茶店派ですね。
    最近はそこそこお洒落できれいなお店がたくさんできましたが、昔ながらの喫茶店の所々に感じる古さや隣の席とのほどよい空間が好きですね〜。
    そのような喫茶店はだんだん姿を消しているので寂しい限りです。

    • おはようございます。やっぱり早起きですね。ジョギングはしましたか?
      わたしもマスターの人間味がある喫茶店派です。
      今月日本に行く予定なので、久しぶりに例の昆布茶の喫茶店に行ってみようかと思っています。日本のモーニングセットとかランチとか驚くほど安くてうれしいです。

      • はい。ジョギングは終わりましたが仕事が終わりません。涙

        帰国されるのですね〜。
        最近は知らぬ間にコーヒーが値上げされてますが、まだ日本は安い方なんですかね。
        是非、昆布茶の喫茶店に行ってみてください。まだお店が残っているといいのですが…。
        お気をつけて!

  2. いつものことですが、うっとりとしながら読ませて頂きました。(笑)
    カフェと喫茶店の違いはなんだろう。。。とボキャブラリーかつ想像力の貧相な私が考えてもsunnysiderさんのようにうまく言葉に出来ません。

    思うに、喫茶店というのは、ドアを開けるとカランコロンと鐘が鳴り、ビロード張り4脚セットのテーブルが3つとカウンター。カウンターの奥には常連さん。。。とそこから発展していきません。(泣)しかも、なんと昭和な発想。
    是非、sunnysiderさんの思うところをお聞きしたいです。

    • mitoさんのように温かいブログが書けたらいいなとおもうんですが、なにせいつも家庭の外をみて妄想しているもので、どうもだめみたいです(苦笑)

      喫茶店のほうが奥が深くて難しそうです。また昭和そのものの時代論になってしまって、読むのが大変な膨大かつ退屈な駄文になりそうなので、ちょっと引いておこうかなぁ(笑)

      じつはイギリスにはもうひとつ、ティールームという分類もあることに気がつきました!紅茶とケーキがメインのお店です。古くさいとこが多いんですが、オサレな最近っぽいところもないことはない。ちょっと発掘してみようかな。

  3. こんにちは:-」
    コーヒー業界にいる身として大変興味深く読ませていただきました。
    コーヒーショップとカフェの線引きは仲間内でも度々してきましたが、ここ最近日本ではカフェでもかなりハイレベルなコーヒーが飲めるお店が増え、なかなかこれと言った答えは出ませんね:-」

    • コーヒーのプロの方に読まれちゃうと恐縮そのものです!が、これは私見、それもワインボトルが半分空の状態のです(笑)

      20年ほど前で街で休める(トイレを借りれる)場所はパブしかなく、それも主流の飲み物は紅茶であるイギリスでの、カフェの発展は著しいです。パブではツマミなしにひたすら飲むばかり、食事は別。食べるもの、場所、飲むものの区別がけっこう明確な食文化の中で、コーヒーは興味深い位置づけにあります。また欧州大陸のカフェ文化と全く違う図柄です。そういう中で、わたしの物差しは、コーヒーのクオリティではなくて、コーヒーの位置づけが、線引きの対象です。

      んー、でも昨今はカフェとレストランの中間もあるし、古典的なティールームというのもあり、アメリカ風なダイナーという言葉も進出しています。

      コーヒー業界って奥が深そうですね。商品市場と人の出会いの究極のハイブリッドでしょうか。

  4. この場をお借りして、Happy Birthday to You !
    日本の文化の日の傘下にある時間帯のお誕生日なのですね。おめでとうございます。

    カフェとコーヒー・ショップの違いの定義、面白かったです。面白いと思ったのは、ロンドンへの通勤圏内にあるという地理的条件が街にダイナミズムを与える機会をそいでいるという点でした。その街の家族形成の主流がどこにあるのかが、カフェ型、コーヒーショップ型のどちらの需要を上げるかの決め手になるのではないでしょうか。シドニーで時々新聞が上げる、独身者の相手に出会うチャンスの高い街5位リストなどというのがあります。果たせるかな、ヨーローッパ人が集まって住むイースタン・サバーブスが上位を占めます。そしてその地域には、コーヒー主流のおいしいコーヒー店(一緒に供される食事は選択数が限定される)が多数あるみたい。

    ブログの文の最後の締めくくり、とても冴えていましたよ。アラ、でも、ワイングラスが傾きましたね。(カソリック)とバプティストでなくプロテスタントですね。思わず笑っちゃいました。禅宗と浄土宗は良く分かりませんが。では、お誕生日のディナーのテーブルでは、さらに傾けてください。

    • あはは、宗教人じゃないのと、ワインを一本空にしちゃったのが丸わかりですね(笑)
      ぜひイースタンサバーブのカフェで素敵なヨーロピアンと知り合いになりたいものですが、東洋人のおばちゃんとの出会いを求めている人はいなさそう(苦笑)SMHのカフェガイドの記事をみました。天井が高くてスタイリッシュなところばかり。お洒落ですー。イギリスにはない都会の洗練さを感じます。

      誕生日を憶えてくださっていてありがとうございます。めでたくはないんですが、年に1度は欲しい物をゲットする口実の日があってもいいですよね!息子からはスコットフィッツジェラルドの短編集をもらいました。このコーヒーショップの同僚の勧めで買ったそうです。美味いコーヒーを淹れる仕事をする人と、グレイトなアメリカンオーサーの組み合わせはちょっといい感じです。また息子はどんな人間だとわたしを説明したんでしょうねぇ。

      来週末から日本です。

  5. ジェイミーのレストランって、現在はいっぱいあるんですね!家にこもっている私は知りませんでした。
    随分前に全く期待せずに行ったFifteen がかなり美味しかったしポーションも大きくて大満足したのですが、ウェストフィールドでは普通に美味しいけれどポーションがお上品すぎてイマイチな印象でした。
    そちらのジェイミーはどうですか?ポーションの程は?(私にはこれ大事)
    コーヒーは濃いのが好きです。学生時代にバイトしていたお店の「フレンチ」というのが大好きでしたが、なかなかこれっというのには最近ありつけないですよね。
    ここ数年のコーヒー産業の変化は本当に著しいですよね。私にはチェーン店の台頭が個人店のコーヒーの質を上げてきたように思えます。半端なコーヒーを出していては敵わないとこだわり始めてきたのでは。
    それに伴い、お友達の家でコーヒーを頼みやすくなったと思うのですがsunnysider さんはどうですか?以前はみんながティを飲むのに自分だけコーヒーを作ってもらうのが気が引けたのですが、最近はコーヒーを飲みたがる仲間が出てきたような気がします。
    そういえば、ほんと、以前は食べる所と飲む所は別、というのが普通でしたね。その後、ガストロパブが流行り、コーヒーチェーンが進出してきて、その区別が緩んできましたね。甘いものが苦手な私には嬉しい流れです。

    • Hinajiroさん、こんばんは。花火は観に行かれましたか?週末は強風でしたよねー。
      実はジェイミーのレストランは行ったことがありません!Yo SushiもGiraffeもいっていません。なんか世の中についていっていないですよねー。

      コーヒー人口とワイン人口が激増しましたよね。それにしてもちょっと歩けばここにもあそこにもコスタとスターバックスがある時代です。Patisserie Valerieもあちこちに支店がでているし。Paulもです。ヨーロピアン化しているといったらパリやローマの人たちは鼻で笑うでしょうけど。たぶんそちらのご近所の奥様たちのコーヒーモーニングではネスプレッソの台頭が目立つんじゃないですか。ギフトボックスにならんだコーヒーをだしてどれになさる?っていう風に。その反面インスタントコーヒー派も健在?コーヒーは2極化しているのかな。

      実は息子がこのコーヒーショップでバイトしているので、豆を買ってきて淹れてくれるのはいいのですが、本人は母に来てほしくないので、どうも行きづらいのが難点なんですー!

      えっ、甘いものがだめなんですか?うらやましい!でも、もしかして大酒飲み?

  6. Good Morning!
    I am enjoying the “conversations” on Cafe VS Coffee shop very much. Here in Seattle, the distinction between the cafe and coffee shop are blurring. There are so many small, good bakery/coffee shops where owners baked their own baked goods, and offer a good selections of coffee drinks popped out throughout the city recently. When I was living in San Francisco in 70’s, my favorite hung out places were a French bakery/coffee shop and the Italian espresso bars in North Beach district. For my at home drinks, I used to shop coffee beans and teas at Peet’s Tea and coffee shop in San Francisco. They are well known for selling the top quality coffee beans and teas. I later leant “the mega-chain coffee shop” funder used to go there to learn about coffee.
    By the way, one of my favorites coffee shops in Seattle, Espresso Vivace’s owner, Mr. David Schomer pioneered the “Latte Art” and his video of “How to” was studied by many Latte artists. Once a year in October, Seattle host the Coffee Festival which draws over 150 coffee industry participants. One of the highlight could be The Latte Art World Championship. In 2008 Hiroshi Sawada-san from Japan won the title.
    Since the discovery of coffee beans in Ethiopia, 1,200 years ago, coffee drinking culture nearly conquered the world, wouldn’t you say so? Have a wonderful, safe trip to Japan. Ah… you can enjoy Matsutake Gohan with a super Sake! Urayamashii …!

    • シアトルとサンフランシスコは英語圏におけるコーヒー文化のcutting egeというイメージがあります。70のSFですか、すごく興味を惹かれます。ラテアートの発祥の地とは知りませんでした。コーヒーそのもの、というよりコーヒーをとりまく文化や価値観が社会や時代を映し出していて、それがカフェが好きな理由のひとつでもあると思います。そういう点でシティそのものがorganicであるように、カフェの存在も非常にorganicであると思うのです。そんな中で自分で線引きなんかするのは、結局自分と外界の関わり方に対するこだわりなんでしょうね。

      ああ、松茸なんて懐かしい。食する機会があるかな。いってきます。

  7. こんにちは~

    私も、コーヒーショップとカフェの違いってなんだろう??
    なんて考えてしまいましたぁ
    カトリック=コーヒーショップでしょうか^^
    千客万来では有るが少々敷居を高くしてある…ような?
    喫茶店もそうですが、どことなく『一見さんお断り』の
    雰囲気を感じてしまって…
    そのくせ『通いのお店』なるものを持つ憧れも有りますが
    未だにスタバ通いで誤魔化しております(笑

    日本では近年『市町村合併』なるものが大々的に行われまして
    同じ市町村でも全く生活空間が違う所も多々有りますが
    田んぼの中にポツーンと出来たパン屋さんが人気だったりして
    面白いですよ^^

    • フォレさんは通いのお店が持ち前のフットワークを活かしてあっちこちにある感じがしますよ—(笑)

      スタバって去年イギリスではシステムが変わって、注文するときに名前をいうんです。で、カップに名前が書かれていて、できたら誰々さーん(スティーブ!とかケイト!とかいって)って呼ばれるんです。アメリカ風フレンドリーなんでしょうけど、どうも馴染めません。今度思いっきり似合わない名前をいってみようかな、(エリザベスとかロキシーとか)またはスペルが不明な異国風長ったらしい名前。

      田んぼの中のパン屋さんってシュールなものはある意味でとっても日本ですね。茨木にもありますか?

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