IKEA文化論-反IKEAというわけではありませんが

5

今回でもう行くのはやめにしよう。そういいながら続いているIKEAとのつきあいは、ロンドン中心部の1ベッドルームフラットに住んでいた時代に遡ります。自慢にならないIKEA歴20年をふりかえって….スエーデンのデザインによるシンプルなスタイル。お手ごろ価格。今や世界中にIKEAのネットワークは広がり、一旦撤退した日本でも、船橋での成功を皮切りに九州や関西にも支店ができています。ロンドン・ウエンブリー店は現在では多層階駐車場完備であるけれど、当時は大型スーパーみたいに店舗前に平地の駐車場のみでした。ここイギリスでもサウスではクロイドン、レイクサイド、ブリストル、サウザンプトンにもオープンし、大盛況です。

利点その1。デザインと価格

安いものはダサい。この一般論をくつがえしてくれます。「デザイン」「スタイル」「コンセプト」という言葉を想起させる家具や雑貨たちは、生活の匂いを消します。それが高級なインテリアショップに澄まし顔で展示されているデザイナー家具の何分の1の(数十分の1?)の値段で手に入るのです。

利点その2 フラットパック

狭い家やアパートでも組み立て式なので搬入が容易。IKEAが売る商品は「家具」というでかい固体全般を指し示す名詞ではなく、ベッドとかクローゼットなどの用途別のモノであり、一般的な家具屋で家具を買うことよりかなり敷居が低いです。また、配送を頼みその日に家にいることを考えると、週末に自分で組み立てる方が合理的。

利点その3 生活全般のライフスタイルショップ

ベッドルームからキッチン、バスルーム、リビング、すべての居住空間をカバーするので、ある程度の統一性が保てます。定番商品は買い足しが可能。

利点その4 行って楽しい

巨大な展示エリアはライフスタイルのテーマパーク。デザインや商品ごとにセットアップされたショールームのリビングルームやキッチンは見て回るだけでインスパイアされます。安いカフェテリアで食事までできるので、雨の日に近所の郊外型ショッピングセンターをぶらぶるするより気が利いてます。

しかし。。。。。

収納家具やキッチン雑貨を買い生活の場にモダンなスタイルをスパイスとして取り入れたい若いカップルだった我々も子どもが生まれると、子供部屋用のカラフルな家具や可愛い雑貨売り場で過ごす時間が増えます。行くたびにカフェテリアでミートボールやサーモンを食べ、雑貨をカゴに放り込みながらIKEAと自分の生活に歴史が生まれるとはたと気づくのです。

IKEAの商品は結局は安物です。長持ちはしません。倍の値段を出したソファの方が見た目はダサくても座り心地はよいし、合板の本棚も合板にしかみえません。クッションなら中綿がへたり、ダウンのものにはふわふわ度がかなわない。陶器の皿は縁がかけ、次回は磁器のものにしようと思う。買った当初の新鮮さが薄れると、安普請さが目障りになってきます。IKEAでこういうモノを買ったよ、という台詞は賢い消費者であることより、バーゲンハンター度を誇ること。まず金持ちは行かない。行列に加わり荷物を運びこみ家具を組み立てることに時間を費やす必要がない。

IKEAの商品コンセプトの人生的側面は「とりあえず性」。上等の家具は買えない、だからつなぎとして、洒落ているし安いから買ってしまおう性。これは計画性のなさの裏返しでもあります。5年後とか10年後の将来の図式にIKEAで買ったモノたちは含まれないでしょう。これは「本当に必要なモノを良いものの中から選び抜いて購入し大切に使う」というコンセプトの対極にあります。広大な売り場面積と莫大な商品ストックを持つ、マスマーケットをターゲットにした消費文化の最前線基地。さんざん売り場を歩かされ雑貨コーナーにたどり着いたときには消費モードのスイッチオンで、いらないモノを次々とカゴに入れてしまうのです。

IKEAの商品はそのデザイン性から生活臭を消す魔力があります。あの巨大な倉庫スタイルの展示場のデザイン感漂う空気が自分の生活空間にも入ってきたと思ってしまう、いいかえれば現実を直視しないツール。部屋を白にしてミニマリストのシェルフを組み立て、観葉植物を置き、北欧の住環境のイメージに浸っても、実は給料が上がったわけでも、仕事の展望が開けたわけでも、貯金や年金積立が増えたわけでも、持ち家の時価が上がったわけでも、子供の成績が上がったわけでもありません。中途パンパな出費するより、倹約して転職に向けて資格取得をするとか、教育資金を1円でも多く貯めるとか、屋根の修理をする方が現実では建設的です。モノは自分のアイデンティティの鏡であり、洋服だってなんだってモノを買うと自分がより豊かになったという幻想にひたってしまいます。

また、IKEAのファニチャーを組み立てたことのある人なら分かると思いますが、作業が終わるとそこはかと湧き上がるのが不思議な達成感。ベッドの一つでも完成すると、なんだかえらく自分が実用的で有用な人間であるような気がします。でも実はパズルやレゴができ、ある程度の知能指数をもち、完成させる意思があるなら大抵の人が組み立て可能。レゴでお城が作れる人が物置小屋の一軒も立てられるでしょうか。ただ、組み立て式家具を組み立てるにはコツがいり、手が4本必要で、そのうち1本は左利きが望ましいとか、重い板を抱えて支える強靭な腕と腰がマストだったりする。穴と釘が入る位置が微妙にずれていたりして、大工道具を持っていたり、経験があると強みになることは明言しておきます。そして引越しの際にはバラさなければ家から家具を出すことができないケースも多い。その際には確実にそれなりの大工道具とスキルを要するし、ファニチャーに傷がつく可能性が大です。

だからといってわたしはここで反IKEA論を唱えようしているのではありません。

チープなもので囲まれるのではなく、本当に必要なモノを良いものの中から選び抜いて購入し大切に使う派にシフトしたわたしたちは、しばらくIKEAから遠ざかりました。行くたびにあの人ごみにいくのは、テーマパークに行く時のように、「さぁ、いくぞ」という意気込みを必要して疲れるのも理由のひとつ。でも赤ちゃんは小学生になり、時代とともに必要性が変わり、たびたびIKEAにお世話になりました。行くたびに混雑がひどくなるのを実感し、安物買い生活から足を洗おうと思いながら。

娘の部屋の模様替えのため数年ぶりにIKEAを訪れました。

IKEAの家具は長持ちはしないとはいいました。家具とはもともと10年20年使うことを想定するものであったけれど、嫁入り道具がインテリアに全然合わないという人も多いですよね。また、家を購入する以外同じ家に何十年住み続けることはないでしょう。住む家が変われば必要な収納手段やインテリアも変わります。好みや流行するデザインも変わります。

うちにはCDサイズの引き出しが付いたオーディオ用収納家具があります。IKEA製品ではなく、上質な木製で結構なお値段をだし、本棚とお揃いで購入したものです。「タイムレスなクラシックデザイン」のはずで、今でもそうです。CDなんかもう買わないことを除けば。ロフトにしまっていたレコードプレイヤーを取り出し、よりレトロなルックスの新品のターンテーブルがとって代わり、その上に鎮座することになろうとは、買った当時想像しませんでした。

今好きでいいと思うモノを10年後も好きである自信はわたしにはありません。また子供は大きくなるし、独身でも子どもがいないカップルでも住む人のニーズは変化します。刹那的な消費は、今という時間にズレなくシンクロしているというポジティブな言い方に実はすり替えることもできるのでは。時代性というのか、時代共存性というべきか。

わたしはずっとモノクロ写真が好きなのだけれど、デジタルが爆発的に普及した10年前くらいはグラフィックなカラー写真全盛期。スマホの時代になってから世間の好みと流行が変わり、いまIKEAにいくと展示されているフレームの半数以上にモノクロ写真が入っていて、白か黒のフレームが多数売られています。モノクロ好きにはうれしい。英語でいうところのpicture ledge(IKEA Japanではアート用飾り棚)という壁に取り付ける幅10センチほどの浅い棚がトレンド。ちがう絵や写真を掛けたいと思うたびに壁の穴の位置の問題がありません。Conran Shopで商品展示に使われているのを見つけて、こんなの欲しいと思い続けていたところに、IKEAが売っているのを知ちハッピー。廊下の壁に取り付けると下手な写真も雰囲気良く見えます。そうすると「好き」という言葉が自然に出てきました。

好きなこと、好きなもの、好きなひと。「好き」は人が生きていくうえで、もっとも大切な言葉のひとつで、やはり好きなものに囲まれ暮らしたい。常時変化する自分がいま好きなものを身近に置いて何がわるい。長期展望がなかろうと、思い込みだろうと、安物買いの銭失いであろうと、ちょっとしたモノたちから、ちいさなハピネスを感じ、前向いてやっていくわずかな糧にする。消費はパワーの放出であり、その根底にあるのはHopefulnessではないでしょうか。

5 コメント

  1. 今のマンションに引っ越すとき、IKEAで家具を少々買い揃えました。
    ダンナと吟味して選んだのがチェストとダイニングテーブル。
    組み立てて配置して、うっかりがっかり気付いたのが日本のマンションサイズには合わない。。
    家具が微妙に大きいんですよね〜。存在感ありすぎというか。これは計算外でした。
    やはり日本には日本のメーカーのものを買うのが正解かなと思った数年前。
    とは言ってもデザインは今でもお気に入りです♪

    • あの広大な売り場でみるとの実際に家の中に入れてみるのでは、全然サイズ感覚違いますよねー。また、うちは築100年のヴィンテージもの(!)ですから、モダンなデザインは合いません。おたくはアーティでクリエイティブだからインテリアも素敵なんでしょうねー。

  2. IKEAを分析する、っていうテーマのペーパーだったら、コレはA+ですねっ!うんうん、そうそう、そうなんよねーっていちいち頷いてしまいました。私がIKEAで買物をするときも、すっかりIKEAマジックにかかっていました。「これくらいの値段なら買ってもいいよね」ぽいぽいとかごの中に入れていく始末。で家に帰ってから、コレ、どうするの?と。誰かさんのクリスマスプレゼントにできないかと考えたり…IKEAのキッチンのカタログなんかを見ると、「私たちのキッチンもこんな風になるのかも。。。」と夢見てしまいますもん。

    sunnysiderさんのお家はセンスよくてここちの良い空間なのでしょうね〜。そんな気がします。

    • papricaさん

      ひさびさにIKEAに行ったら、これまでの鬱積(?)で、うわーっと書きたい気分になっちゃったんです。A+ですか?先生、ありがとうございます!
      うちは、あそこもここもやりかえなくてはならないといいながら、ほったらかし、DIYやりっぱなしのあばら家です。残念ながら雑誌からはほど遠すぎる、とほほ、な家です。
      なのでパプリカさんちみたいに、写真を載せることもできず、モノクロ写真でごまかしている有様です。(苦笑)

  3. こんにちは
    私の住まいから1時間くらいのドライブでIKEAに行けます^^
    近年日本の家のデザインもだいぶ変わってきていますので
    IKEAの人気の日本での人気もうなずけます^^
    私は家具より、生活雑貨、小物が多いので
    最初から数年もつかな??って気持ちで購入しています
    IKEAの飾り棚にsunnysiderさんのお写真が飾られているんでしょうか^^
    高価なものは、まだもう少し。もう少し生活が落ち着いてから…
    と、まだいいまだいいと思っているうちに
    いつの間にか隠居生活しちゃっていそうですよ私は(笑

コメント欄