2010年以降リリースのおすすめcoming of age映画

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雨も多く肌寒い日が続いた後の快晴の土曜の朝。今日は1年のうちでブラックベリー摘みに最高の日。そう確信した母と娘はいつもの場所に向かって車を走らせました。

ブラックベリーは住宅街の外れの垣根や茂みなどに何気なく生えている身近なベリーで、摘む場所は教会の墓地の茂みだったり、おばあちゃんの庭の垣根だったり、各個人それぞれ。でも共通なのは夏の終わり感。ここイギリス南部では8月の終わりが収穫時期です。

行き先はローマ時代には祭祀の場所であった小高い丘で、ぐるりと回ると360度緑が広がっています。蛇行するテムズと教会の尖塔がそびえる町や村がアクセントになっている田園風景。ベンチに腰掛けると風が通り抜けていく。

「これってcoming of age filmsに出てくるようなシーンじゃない?」

「トラブったヒロインがお母さんと車のボンネットの上に座って崖の上から街を眺めて話しこむシーンがあったじゃない?」

 というところから映画談義。夏を題材にした映画は、ひと夏をどこかで過ごす主人公の成長の物語であることが多い。たいていこんな小高いで誰かと肩をならべて後ろからのショットがあるような。離婚して折り合いがわるくなった片親とか、そりが合わないと思っていた同級生と邂逅のシーン。

そうなんだけど、やっぱ音楽が必要よ、と携帯を取り出しプレイリストから最適なBGM探しで盛り上がる。これはポップすぎるだの、スタジオジブリっぽすぎるなどとイヤホーンを片方づつシェア。被写界深度が浅い図でもいいけど、ドローンでふわりと舞い上がって広角で視界が拡大するのもいいなどときりがないのです。

 主人公であるティーンエージャーが大人への階段を一歩登るストーリーであるcoming of age filmsは無理やり日本語にすると「青春映画」?。手垢がつきすぎた死語。でも他に適当な言葉を思いつかないので、原語のままカミング・オブ・エイジと発音しておきましょう。

 時間の流れ方がちょっと違う夏休みには郷愁に似た感覚と切なさが呼び起こされます。2010年以降に絞ってcoming of ageものを挙げるとすればこれかな、というのが以下の作品。お互いが観たことがあり同意した映画オンリーなので、ティーンエージバイアスが強いのはご了承ください。

Boyhood (2014)「6才のボクが、大人になるまで」監督 リチャード・リンクレイター

両親が離婚後、母と暮らす男の子が6歳から18歳になるまでを撮影した映画で、12年を通して同じキャスト。166分と長くストーリー展開の妙を楽しむ作品ではなくて、キャストが年を重ねていく12年の歳月の厚みの中に浮かび上がる一瞬一瞬を味わう映画。12年の間挫折せず撮り続けた監督の執念に脱帽。少年から青年に成長する主人公の脇を固める男運の悪い母とそれこそ永遠のボーイである父(イーサン・ホーク)がまたよい。シンプルで味わい深いインディー映画的原題に対して邦題はお安いファミリーホームドラマ風。この垢抜けないタイトルだったら日本では絶対観てなかったでしょうね。

Easy A(2010)「小悪魔はなぜモテる?!」監督ウィル・グラック

カトリック系の学校に通う高校生がロストバージンの嘘をついたらそれが広まり、誰とでもベッドインしてしまうslutというレッテルをはられ、そこからいかにして抜け出すか、というお話。ティンエージャー業って楽じゃないんですよね。学校という狭い世界で生きていかなきゃいけないわけで。実は主人公のエマ・ストーン好きなんです。ハスキーボイスがいい。これもこんな親がいたらいいよね、という理解度高い素敵な親(スタンリー・トゥッチとパトリシア・クラークソン)も好きです。

Moonrise Kingdom (2012) 「ムーンライズ・キングダム」監督ウェス・アンダーソン

ボーイスカウトのキャンプ中に12歳の男の子が女の子と駆け落ち。どこからどこまでも60年代で、ウェス・アンダーソンらしい構図やカメラワーク、色やスタイルを楽しむ映画でしょうか。

ビル・マーレイ、ジェイソン・シュワルツマンといった常連俳優に加え、ブルース・ウィルス、ティルダ・スイントン、ハーヴェイ・カイテルという個性派実力俳優が上手くはまっているのがすばらしい。

The Kings of Summer (2013) 「ザ・キングス・オブ・サマー」監督ジョーダン・ヴォクト=ロバーツ

生活に疲れると山奥の森深くに住む屈強な木こりだったらいいなと思うのはわたしだけではないみたいですね。そんな憧れを主人公たちが実現する話。学校と家で閉塞感を感じているティンエージャーのボーイズ3人が本当に家出して森の中に小屋を作りそこで過ごす夏の物語です。万人がもつ夏休みへの郷愁がふつふつとする映画。といっても森での生活はそんなに叙情的でも楽でもない。夏には終わりがくるのです。

Youtubeの予告編のリンクを貼り付けておきますが、国によってみれない場合もあると思います。みれなかったら、ご自分の国でググってみてください。

さて夏休みも終わりに近づいていますね。ちょっと寂しい気はしますが、秋は映画のシーズン。この秋、映画とのいい出会いがありますように。

P.S. 獲ったブラックベリーはこのようなケーキになりました。

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6 コメント

  1. あ~素敵な記事を拝見して、お天気のせいか朝からどんよりした気分が晴れました。ありがとうございます。
    「6才の~」は先日観ました。離婚しても父と子の関わり方が素晴らしかったですね。おそらく日本ではここまでオープンに出来ない気がします。日本は個人の繋がりより家族という入れ物に拘り過ぎるのかもしれませんね。似て非なるものではありますが、「北の国から」では小学生の頃から大人になるまで蛍と純を撮り続けましたね。あれは「6才の~」に比べると、ちょっと作り過ぎた感じが否めませんが。。。(笑)
    どの作品も面白そうですね。「ムーンライズ・キングダム」は是非観てみようと思います。日本ではこの夏、大阪で中一男女が夜遊びの挙句、変質者に拉致され遺体となって発見されるという痛ましい事件が起こったばかりです。それを払拭するためにも、楽しい夢を観させてもらいます。

    • いつもハートがあったかくなる(mitoさんの写真がそうです)コメントをありがとうございます。
      映画のいいところは夏が終わるとお話も終わっちゃうところなんですよねぇ。夏休みが終わると現実が待っているのが実生活。Life goes onです。そう、ライフは続いていかなきゃいかんのです。終わらないで。そのうち、心が疲れた時のfeel good moviesを特集しましょうかねぇ。

  2. こんな景色を見ながら娘さんと「coming of age film」の話題で盛り上がるなんて、なんて素敵な関係。そんなお二人のシーンが映画になりそうです。Boyhoodは、みたいなぁって思いながらまだ見てなかった!今週末に見てみます♪ Moonrise Kingdomは楽しかった!ウェス・アンダーソンの独特な色が出てますよね。彼の作品は見終わった時になんだかほっこりできるので好きです。
    自分が coming of age だったときに見たcoming of age filmというと、やっぱりスタンド・バイ・ミーです。自分の狭い世界で精一杯だった時にみたあの作品には、衝撃を受けたな〜(懐かしい)。
    feel good moviesの特集、お願いしまーす!

    • papricaさんちのように海に近いと、裸足で砂浜を走って風に向かってバッカヤローとか叫んだりして、昭和の香りがする青春ドラマのシーンを再現してみたいところですが、なにぶんしれーっとした二人組で、島国のカントリーサイドでしたので映画談義が関の山でした。
      スダンドバイミーまた観てみたいです〜〜。papricaさんこそ本も映画も幅広くカバーしていらっしゃるからお勧めをブログで紹介してくださいねー。

  3. そちらでは今頃がブラックベリーの収穫期なんですね。6月にカリフォルニアでベリー摘みをしました。ブラックベリー以外に、boysenberryとolallieberryがありました。私は初めて聞くベリーだったんですが、sunnysiderさんはご存知でしょうか。食べてみた結果、美味しかったのはやはり、ブラックベリーとラズベリーでした。ブラックベリーのケーキ美味しそうですね😋
    「6歳のボク〜」少し前に観ました。可愛かったメイソンくんがアンニュイな青年になるとは。。大学入学前にガールフレンドと旅して、夜明けを迎えるシーンが印象深かったです。メイソンくんはこれからも「なんでだよー、どうすればよかったんだよ〜」とうめきながら、人生を歩んでいくんでしょうね。。パパみたいに。一見たくましくなり過ぎ?に見えたママが、メイソンが自立するときに「子どもたちがいなくなって、これからいいことなんて、何もない!」と泣いちゃうシーンも身につまされました。。最近映画観てないな。。
    「バードマン」スクリーンで観たかったけど、やはり見過ごしてしまいました。

    • boysenberry は聞いたことがありましたがolallieberryは初耳です!いかがでしたか?6月のカリフォルニアというセッティングがまた素敵。ベリー類は種類が豊富ですよね。でもわたしはラズベリーがフルーツのなかで一番好きで、近くのファームに摘みにいきます。ブラックベリーはリンゴとの組み合わせがこちらでは王道なのですが、ココナッツと組み合わせるレシピがあったので試してみました。
      メイソンのママが泣くシーンは、母親業をやっている人にはみんなぐっとくるでしょうね。気持ちはよーくわかります。
      バードマンはわたしもみ損ねちゃいました。スクリーンで観るべき映画ってありますよねー。

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