ティルダ・スウィントンの飛び抜けた超人性と新作「A Bigger Splash」

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ティルダ・スウィントンの超人性に圧倒されたのは、手が触れらる距離で本人を拝したときで、それはたぶん1995年9月の5日か6日。

そんな大昔のことをよく憶えているのは、個人的な大事件が同じ週に起こったからで、夏の終わりっぽい麗らかな日であったことは、そのとき撮った写真からうかがえます。いまでは絶対着ないAラインの花柄のワンピースを着てソフトクリームもって笑ってますから。

場所はハイドパークのサーペンタイン・ギャラリー。ティルダ・スウィントンがガラスケースの中で目を閉じて死んだように横たわっている「展示」を鑑賞するイベントで、デレク・ジャーマンの前衛的映画に出演していた女優ならこういうのもあり的アイデア。並みの女優にはとうてい真似できません。それは彼女の超人性そのもののエキシビションだったから。その様子は以下のリンクでみることができます。

http://www.serpentinegalleries.org/exhibitions-events/maybe

ガラスケースの中の彼女は大理石とクリスタルを思わせる人間離れした硬質感と冷たさを放っていて、頬骨、鼻筋、唇、顎、すべてのラインが絶妙なバランスでつながっている。細いのだけれど強靭さを秘めた骨格。精巧な彫り物にありがちな脆弱さは微塵もない。この人は絶対に壊れない。後にナルニアの映画でアイスクィーンに扮したときに放っていたクールな異人性が、静かに眠る本人そのものの中に凝縮していました。

突飛なだけなのかとことんお洒落なのかよくわらないトンでるファッションといい、ヘアスタイルや風貌といい、出演する映画のチョイスといい、ほんとにブレのない人で、独特の統一感がありますね。

そのティルダ・スウィントンがえらいかっこいいらしい新作「A Bigger Splash」(邦題:胸騒ぎのシチリア)を急に思い立って観にいってきました。

あらすじ:

喉の手術後の療養中である往年のロックスター、マリアン(ティルダ・スウィントン)とフォト・ビデオグラファーである若い恋人のポール(マチアス・スーナルツ)はイタリアの島で怠惰なバカンスを過ごしていた。古いタイル張りのプール、テラコッタの植木鉢、木製のデッキチェア、埃っぽい赤土の風景、年季の入った木製テーブルでのアルフレスコダイニング。アイコニックなヴィラが舞台。そこにポールをマリアンに紹介した昔の曰くつき中年プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が娘と称する若い女ペネロペ(ダコタ・ジョンソン)を連れて突然現れ滞在することになる。4人の関係に微妙な歪みが生じ事件に発展する。それが登場人物の死であることは予告編で絶叫するマリアンのショットから明らかで、誰がどのように?

Pros:

  • キャスティング。超人ティルダは有名人のオーラを撒き散らす役にはぴったりだし、一癖も二癖もある饒舌な音楽プロデューサー、ハリー役のファインズが秀逸。誰にもでできる役ではない。Danish Girlでみせた端正さとまったく違うマチアスの男臭さがいい。この人の目と顔、好きです。
  • マリアンの洋服がとにかくシックでスタイリッシュでかっこいい。普通の女には着こなせないシンプルなエレガンス。サングラス映画賞があればあげたいくらい、クールで上手く使われているサングラス。
  • マリアンは喉の手術後の療養中で、喋ってはいけないという設定。なので台詞が非常に少ない。喋らない演技のティルダが見もの。
  • 100人中98人がこんなホリデー行ってみたいと思うだろうアイコニックなバカンス設定。(2人ぐらいはアンチイタリアがいるでしょう)シチリア島沖のパンテレリア という小さな島。ステレオタイプなイメージがないマイナー度がよろしい。

Cons:

  • ティルダ・スウィントンは煙草とドラッグと酒を連想させるはずであるロックスターを演じるにはクリアカットすぎ。また彼女の着ている衣類があまりにも素敵なのだけれど、ロッカーが着るには上品でクラッシーすぎ。
  • 演技がいい。にもかかわらずこの映画のテーマであるべきサスペンスが盛り上がりをみせない。男と女の業とか情とかが描ききれていない。もっと辛口でアーティに仕上げてほしかった。
  • 50 shades of Greyからセックスを連想させるダコタ・ジョンソンの安易な起用。ペネロペ役にはティーン独特のアンバランスな危うげさをもつ無名女優の方がこの四重奏によりうまくはまった気がする。

 

というのが私感で、enjoyableな映画で、金曜の夜に映画をみたいというニーズにはぴったりでありました。アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー出演の1969年作品「La Piscine (太陽が知っている)」のリメイクということなので、オリジナル映画も観てみたいものです。ジェーン・バーキンがペネロペで、小娘だった時代です。

2 コメント

  1. お久しぶりですね~
    サニーサイダーさんの映画のpros & cons を、読むと、この映画を観に行きたい!と思いました。
    3月下旬で~す。気長に待つ必要がありますね。先週はCharlotte Ramplingの45 years、 初日に
    行きました。Coolな彼女が、感情の葛藤のはざまに投げ込まれる役。うまい。あの陽がさんさんとは射さない、もやのかかった英国の田園の風景(Norforkなんですってね)といっしょに、今も、考えています。

    • ヘレン・ミレンとシャーロット・ランプリングは年を重ねてもかっこいいと思う女優さんです。いい年をとりたいものですが、迷いが多く、ちょっと残っている若さにしがみついてせっせとジムに通っています。じっくり文章を書く気持ちの余裕のない生活です。

      葛藤って演技力が試される内面ですよね。45yearsなんてなんかんのいいながらあら、経ってしまっている、という感じの年月かもしれません。機会があればぜひ観てみたいです。ノーフォークといえばとてもフラットな地形で靄のかかったクリークなどがみられる田園風景の地ですね。まったくもって物事の輪郭がはっきりしない風景ではなく、白黒はっきりくっきりの明るいシドニーの景色を眺めたいものです。

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