オックスフォードの道端で会ったおじさんのLGBTへの一言

2

ここ数年でもっとも脚光を浴びている言葉のひとつがLGBT。それにまつわり、先週ギョッとした反応にお目にかかった話です。

麗らかな日曜の午後のオックスフォード。Dreaming spiresと呼ばれる歴史を刻んだ荘厳な大学の建物が並び、観光客がひしめく中央部ではなく、エスニックなカフェやスーパー、移民系の人口が多い下町Cowley Roadエリアでのこと。

この辺りは1年目を学生寮で過ごした2年生が借りているシェアハウスが多い。床はぎしぎし音を立て、サッシュウインドーの開け閉めもうまくできない、埃が吸い込みすぎ色褪せたカーペット敷きのフロアとレンガの壁は断熱効果が著しく低く、冬はジメジメ寒いヴィクトリア時代に建てられたテラスハウスが連なるエリア。大人数でシェアできるよう増築された家々は一部屋7万円前後の相場でクリスマス前に賃貸市場に出されると数日のうちに翌年の9月からの借り手が決まります。需要と供給からなる経済のセオリー通り。学生に貸し出されているのが明らかなのは、学生の足である自転車が何台も外に括り付けてあるから。また家主も自分が住むならもっと外観に気を使うだろうというあばら家感が漂う家も多し。由緒正しく格式高い最高学府へいってはいても学生たちが住むわけだから、通りにはリベラルでリラックスした空気が流れています。

そのうちの一軒の2階の窓からLGBTのシンボルである虹色の旗が吊り下げられていました。LGBTウィークが終わった後も敢えてそのままにして主張し続けているのか、ただ仕舞うのが面倒なだけか。

知人を訪ねるため、その家の前にたまたま車を停めたところ、通りがかったオジさんに声をかけられました。
「ずっと思っていたんですが、あの旗には何の意味があるのかご存知ですか」
50から60歳ぐらいのカリビアン系。身なりは感じよく、どこか親しみのあるヴォイスで丁寧な話し方。このご時世にレインボーをご存知ない人がやっぱりいるんだーっと不意打ちをくらう。

「LGBTって知ってますよねぇ(知らないかもしれないけど、ここで知らんとは言わせたらあかんという勢いで話を続ける)レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどのセクシャルマイノリティーの立場を擁護するというか啓蒙するというか認識を高めてほしいという意味だと思いますよ」
ふふんとうなづく彼。しかし一呼吸置いた後、
「では、あの家にはゲイピープルが住んでいるんですか?!!」
とエクスクラメーションマークがついた勢いのリアクション。なんと返すべきかわからない。
「Not necessarily. (そうとは限りませんよ)」
と言葉を濁す。だってトランスジェンダーかもしれないしレズビアンかもしれない。またはLGBTでなないかもしれないじゃないの。オジさんは私に向かって丁寧に礼を言い去り際にこう一言。
「でもね、ここはmy areaなんですよ、you know」

このオジさんの会話は以下の要素を含んでいます。

1)Town and gown(タウン・アンド・ガウン)
オックスフォードやケンブリッジという大学に独占的に占拠されている街では、大学関係のアカデミックたち(ガウンー正装時のケープみたいな衣服からくる)と大学に関係ない一般市民(タウン)に分かれ、両者の拮抗が歴史的に存在しています。

2)ジェネレーション・ギャップ
あのオジさんはカリブの親類とSkypeはやっているかもしれないけれど、SNSのアカウントはもっていないさそう。セクシャルマイノリティーに関するメディアに触れる機会が少ないうえに、夏に流行ったIcebacket チャレンジとかFacebookのプロフィール写真を虹色にするなんていうこととは関係のない生活を送っているのでしょうね。

3)階級の差
オジさんは丁寧な話し方をしてはいたがミドルクラスではありません。労働者階級であればなおされジェネレーションギャップとタウン要素が増幅されるでしょう。オジさんはあの地区に何十年と住んでいるのであろうから、おらが街がポッシュでリベラルという相反する社会的要素を持つ学生たちにハバをきかされてしまっているというのがハッピーでない。昔の学生たちはSNSで連携していなかっただろうから昨今の学生はやることが余計に目立つのでしょうね。市の中心部はガウンと観光客に占拠されているけれど、この辺りは俺たちのシマだっていうつぶやき、わかる気します。

2 コメント

  1. こんにちは!
    おじさんは、昔ながらの下町的な自分のテリトリーに新しい風が吹くのが嫌なんでしょうね、、、、でもきっと差別はしてなさそうな気がする。
    今ベルリンです。
    今日駅で大声でF-wordが聞こえ、地図に見入っていた私が顔を上げると、20代の男の人が階段でバギーで苦戦している女性に向かって叫んでいるのでした。ビックリして私が駆け寄ってバギーを下まで運びましたが、なんだか悲しかったです。他の人たちも全然素通り、、、、ロンドンだったら誰も彼もが真っ先に手を貸すのになぁ。
    これも性差別かな。
    あいつにはめっちゃ気の強い嫁に捕まって四六時中バギーを押して歩く将来が待ってるといいのに!

    • hinajiroさん

      せっかくコメントをいただいていたのにお返事がおそくなりすみません。イースターのお休みにドイツですか。いいですねー。ドイツって全てが整然としていてエコロジーにうるさい国だし助け合い精神に溢れているところかと思っていました。いろいろとお国柄あるんですね。そういえばわたしもロンドンの地下鉄で刺青入って髪がギンギンにつったっているお兄さんに、頼みもしないのにバギーを運んでもらったことがあります。

      お休みたのしんでくださいね。

コメント欄